たいそう久しぶりに「名古屋」をひろいだ!
「遊気舎」時代にお世話になったりお世話をしたりした!
名古屋の劇団「翔航群(しょうこうぐん)」の座長で
”東海のエド・ハリス”と私が勝手に呼んでいる
久川徳明」氏が
思わぬ誘いをかけてくれたからだった!

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『ど・どしのぎ祭(さい)』
という奇妙な名前のその祭は
日本劇作家協会東海支部による演劇のお祭りだった!
演劇関係者でない方にしてみれば
劇作家である私がその祭に参加する事に
なんの違和感もないのだろうが
誘われた私はずいぶんと首をひねった!
なにしろ私は
その日本劇作家協会なる組織に所属していないのだ!

そうなるとだ!
もっと首をひねったのは
『ど・どしのぎ祭』に現れた私を見た
日本劇作家協会の人々だった!
良かれ悪かれ楽屋も会場も
「なんで後藤ひろひとが?」
という空気に満ちていた!
アウェイにもほどがある状況だった!
知り合いと言えば”東海のエド・ハリス”だけだ!
不安になった私は急遽
ワークショップ「Royal Plant」の名古屋メンバーにして
”歩くナナちゃん人形”の異名を持つ長身女優
「日坂朱里ひさか・あかり」を呼び出し
運転手兼付き人として
”私を一人にしないでね”契約を結んだ!

「では”アドリブ文士劇”の説明をしまーす!」

まずはなにやら劇作家達による即興劇のコーナーだった!
普段は「インプロビアス・バスターズ」の最高責任者として
俳優や芸人に即興劇を強いる私が
どうやら演じる側に回らなければいけない!
これがもし大阪であれば
かなり話題になる事だったのだが
名古屋であれば
「インプロビアス・バスターズ」の
メンバーにもファンにも
誰にも見られる事はあるまい!
私はひるむ事なく挑んでみたのであった!

「トラッシュマスターズ」の「中津留章仁」君や
「THE・ガジラ」の「鐘下辰男」氏
「黒色綺譚カナリア派」の「赤澤ムック」ちゃんに
「北村想」さん「はせひろいち」さんといった
まさに劇作家な人たちに混ざって
私が即興劇を披露するコーナーなど
誰が想像できようか!
しかし現実にそれは行われた!

共演した「劇団放電家族」
”別に赤くもない彗星”こと
「天野順一朗(あまの・じゅんいちろう)」君は
私が「お前”たける”だよな」と尋ねても
「いいや違う!」
の一点張りだった!
ストーリーの途中から登場した
「オイスターズ」を主宰する
”東海支部長”こと
「平塚直隆(ひらつか・なおたか)」君も
私が次々と要求した”無茶ぶり”に
どうしていいのかわからない様子だった!

なるほど!
まだまだ即興文化は日本の演劇界
特に東海地区には
広まっていないようだ!
即興劇の基本とは
まず「否定をしない」事だ!

「お前さてはポッコン星人だな!」

と言われて

「いや違う!」

と答えてしまうと
話はリセットされて
”じゃあ本当は何なのか?”
を探す作業に入らなければいけなくなる!
それではストーリーは展開しない!
しかし!

「そうだよ!
 こんなところで同郷の奴に会えるとは
 思ってもいなかったよ!」

と答えれば
地球で出会ったポッコン星人のストーリーが
さっそく始まる!
この「Yes and…」こそが
即興劇の基本なのだ!

まぁそうした即興劇のシステムに興味のある方は
是非とも今月17日の
『IMPROMANIA 1(インプロマニア・ワン)』
にお越しいただきたい!

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どうにかこうにか演じ切ったところで
出演者や関係者やお客さんの感想を聞いてみると
「去年が大変だったので今年はよかった!」
「今年は面白かったけど昨年は散々だった!」
「前年の事があったので今年は廃止されると思った!」
といった
”1年前”を中心としたものばかりだった!
なので当然
「昨年は何があったのか?」
と尋ねてみたのだが
全員が申し合わせたように口をつぐんだ!
まるで地鎮祭で若い娘を生き埋めにした村人のようだった!
きっとよほどの”昨年”だったに違いない!
なんだか怖くなったので
それ以上深くは尋ねない事にした!

休む間もなく
私は次のコーナーへの参加を依頼された!
20分の短編演劇を3本見て
その感想を偉そうに語るというコーナーだった!
私も劇作家として30年近いキャリアがあるので
きっと偉そうに語る立場ではあるのだろうが
今の私はそういう事がとにかく苦手だ!
久々の新作を手がけている現在
他人の作品をあれこれ語っている場合ではない!
誰かに依頼されたわけでもなく
「やりたい!」
「作りたい!」
と思って若手作家達が作った作品に対し
長年お金儲けのために無理矢理な作品を書いてきた私が
ああだこうだと言うべきではない!
私は3本全ての作品に心を揺らして感動した!
「どれも素晴らしかった!」
という私の感想は多分に場違いであり
会場をつまらない空気にさせてしまった!
しかし本心を偽って
見つけられなかった欠点をでっち上げる事など
私にはできはしない!

そんな3本の中には
私が得意とするようなコメディ作品もあった!
「北海道」からやってきた
「星くずロンリネス」というユニットだった!
「りゅうちゃん」こと
「上田龍成(うえだ・りゅうせい)」君という作家が
たった一人で動かしているユニットなのだそうだ!

「他の2本は私が作るものより
 よっぽど優れた演劇だったけど
 君にだけは普通にアドバイスができると思うよ!」

とだけその場では伝えた!

さぁ休憩しよう!
とつぶやく間もなく
”東海のエド・ハリス”は
続いて私が「劇作家大喜利」に出演する事を告げた!
それを聞いて私はほっとした!
もうそのタイトルの時点で
私が一番のんびりできる時間である事は間違いない!

実はこの「大喜利」に関しても
私は未経験者だったと言っていいだろう!
楽屋や飲み屋や
旅館やホテルや
長距離ドライブや
登山の道中であれ
私はすぐに「大喜利」を始める!
芸人や俳優を相手に
いつでもどこでも「大喜利」をひろぐ!
しかしこうした公の場で
しかも勝敗がつくような環境で
「大喜利」をしたのは
実に特殊な番組
『世界は2割で変えられる』
「ナイツ」や「小出水」君や「ももち」らと
出演した時だけだ!
しかもその番組の「大喜利」は
その場で考える速度を競うのではなく
前もって与えられたお題を
塾考した上で回答を披露したものである!
”やらせ”とかではなくそういうルールだった!
”東海のエド・ハリス”には
「大丈夫ですか?
 大喜利なんかやったら
 どう考えても私が優勝しちゃいますよ!」
とは豪語したものの
実際のところ勝ち負けに関する予測は
まったくできていなかった!
しかし!
その日それまで
様々な要因のストレスを蓄積していた私は
「大喜利」と聞いただけで
もうなんだか一日が終わった気がしたのだった!

さぁ!
ひろごう!

総勢20名以上の劇作家達によるトーナメント形式で
かなりレベルの高い「大喜利」だった!
前回優勝者の「南参(なんざん)」君は
なんと「大喜利」のためだけに
自費で北海道からやって来た劇作家だった!
彼は
「答える時には地声ではなく
 しっかりマイクを使った方がウケがいい!」
というなんともプロフェッショナルな発言をした!
みんなそこまで真剣な大会だった!
そんな中で
恐らく私が一番
他人の回答で笑っていたのではないだろうか?
私はいつも楽しむためだけに「大喜利」をしていたので
どうしても楽しい回答が出ると
普通にいっぱい楽しんでしまう!
しかしそれこそが
「私はもっと楽しい事を思いついたよ!」
と言える原動力となるようだ!

「”軽トラ”という言葉を使って
 悲しい文を作ってください!」

誰が考えたのだろう!
素晴らしいお題だ!
私はこんな答えを書いてみた!

「軽トラが連続してひよこを7匹踏んだ!」

悲しい!
手が震えるほど悲しい!
我ながら実に悲しい”軽トラ”文だ!

「”いないいないばぁ”のメロディに
 違う言葉を入れて
 赤ちゃんを泣かせて下さい!」

これまた素晴らしいお題ではないか!
さすがは日本劇作家協会だ!
私はふと思いついたこんな回答をしてみた!

「Cry Cry Boy!」

赤ちゃんを泣かせようと思ったのだが
会場の観客はずいぶん笑ってくれた!

そんな事ばかりを楽しみながら発表していると
気がつけば私は優勝していた!
日本劇作家協会主催の劇作家大喜利にて
非協会員である私が
うっかり優勝してしまったのだ!
これは大変な事をした!
それはまるで「新日本プロレス」の宝である
「IWGPヘビー級タイトル」を
ロシアからぶらりと現れた
「サルマン・ハシミコフ」が取ってしまった
あのアウェイ・アクシデントにも近い!
そしてなにしろ優勝してしまったからには
私はまた来年もこの大会に出場しなければならない!
ほぼ自動的に
私の来年月末のスケジュールが決定してしまった!

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そんなわけで授与された
「大喜利王」の盾は
紙粘土で作ったぺらんぺらんな物だった!
あと3回箱から出せば
確実に崩れ落ちるであろう!
そんな優勝盾だった!
前年優勝者の「南参」君が持っていたのは
小さく頑丈なメダル(100円ショップにて購入)だったので
「なんとか盾と交換してもらえないか?」
と交渉したのだが無理だった!
この盾を一年間無傷で保存するのはとても難しい!
来年と言わず
さっさと返還させて欲しいものである!

ちなみに「大喜利」の中で
一人圧倒的に輝いている男がいた!
「演劇組織KIMYO」なる集団を率いる
「宮谷達也(みやたに・たつや)」という作家だった!

「どんどんサービスが過剰になる
 名古屋喫茶店名物の”モーニング”
 ついに登場した新手のサービスとは?」

というお題に対し「宮谷達也」は

「おちんちんを触ってくれる!」

と答えた!
嬉しかった!
馬鹿は関西だけの特産物ではなかった!
彼が回答する全てが馬鹿だった!
ゴミだった!
ヘドロだった!
彼にはほとんどポイントが入らなかった!
なのに彼は決して路線を変える事なく
最悪の馬鹿回答を続けた!
私は笑い転げた!
司会者からは
「後藤さんしか笑ってません!」
と指摘された!
それでも彼の馬鹿は続いた!
こんな男でも日本劇作家協会に入れるのか!
協会恐るべしだ!

その演目を持ってその日のイベントは全て終了し
私は全ての役目を終えた!
翌日もその祭は続いたのだそうだが
「明日はかなり真面目な企画ばかりなので
 後藤さんは必要ありません!」
と”東海のエド・ハリス”に説明された!
感謝した!

打ち上げ会場では
とても沢山の作家達が
私に話しかけてくれた!
私の作品を見て劇作家を志したのだ
という作家が何人もいた!
嬉しかった!
心の底から嬉しかった!
新作の発表が遅れている今の私は
周囲からタレントのように扱われる事が多い!
そんな中で名古屋の劇作家達は
ちゃんと私を”仲間”として扱ってくれた!
その事は劇作家としての私を
おおいに奮起させてくれた!
なるほど!
これこそが日本劇作家協会たる所以か!

はてさて!
ここで私は
映画監督「林海象(はやし・かいぞう)」
の話をしなければいけない!
関西演劇界ではとてもよく知られる人なので
私もいずれどこかで出会うだろうと思っていたら
このたび同じ『ど・どしのぎ祭』のゲストとして
出会う事となった!
話をしてみて驚いた!
監督は現在
私の実家「山形」にある
「東北芸術工科大学」
で先生をしているのだそうだ!
しかも
それまで住んでいた「京都」から
毎週「山形」に通うのは面倒だとの事で
現在は「山形」駅前にある私が育ったプラモデル店
「シバタモデル」の近所に住んでいるのだと言う!
まさか名古屋で山形の話をするとは
思ってもいなかった!
その晩泊まるホテルも一緒だったので
打ち上げ終了後にさっそく
”もう一軒行こう!”
という事になり
「はせひろいち」さんや
「りゅうちゃん」らと共に
千種区は今池のバーに向かった!
写真は私と常に高い温度差のある
「はせひろいち」さん!

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当然「映画」や「山形」の話で盛り上がり
私と監督は実に深く意気投合してしまった!
二人だけでろんでろんに酔ってしまった!
監督などは
「山形は本当にいいところなんだから!」
と言って
私と実父「ごんぼちゃん」の行きつけである
「百目鬼(どめき)温泉」の回数券を
その場にいたメンバー全員に配る始末だった!

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ホテルにチェックインし
私の部屋で「りゅうちゃん」と飲もうという事になった!
「りゅうちゃん」には前述の
「君にならアドバイスができるよ!」
と言った約束があったからだ!
監督が「俺も行く」と言い出したのだが
どうにも目のピントが合っていなかったので
「あんたはもう寝なさい!」
と諭して自分の部屋に押し込めた!

気がつけば朝の4時半まで
「星くずロンリネス」に出演していた
「ちび」こと「五十川由華」ちゃんと
「りゅうちゃん」と三人で
演劇やコメディについて語り続けた!
いや!
よく考えれば9割は
「プロレス」の話だった!
はい!
これが「りゅうちゃん」!

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ひろいだ!
一泊という滞在時間は短かったが
私は「名古屋」をとにかくひろいだ!
それはそれは素晴らしい時間だった!
今となっては
とにかく場違いな私を呼んでくれた
日本劇作家協会東海支部に感謝したい!

そんなわけで!
翌日はやっぱり「大須」に向かい
私を一人にしないと約束した
「日坂朱里」と二人で
鳥を一匹食べた!
「名古屋に行ったら
 手羽先かひつまぶし!」
と言う人は多いが
私は「名古屋」に行ったら
「大須」で鳥を一匹食べるまで
帰る気が起こらない!

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翌日のFacebookを見ていたら
「林海象」監督が飲み屋で”自撮り”した写真が
アップされていた!
驚いた!
「誰かに撮ってもらいましょうよ!」
と言ったのに
「いいのいいのぉ!」
と言ってパシャリと一瞬で撮影した写真だ!
どうだこれは!
まるで晩年になって再結成したロック・デュオだ!
映画監督というのはすごいのだなと
つくづく感心した!

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