私の実家「山形県」に
「山辺町(やまのべまち)」という
小さな田舎町がある!
そこは
作家「後藤嘉一(ごとう・かいち)」
画家「後藤紀一(ごとう・きいち)」という
山形では著名なアーティスト兄弟を生んだ町であり
「ザ・ファンクス」で言えば
「ドリー」に当たる兄「後藤嘉一」こそが
私の祖父である!
そのため後藤家の墓はその「山辺町」にあり
子供の頃には私もよく「山辺」を訪れたものだ!

信心の薄い私は
いつしかお墓詣りには行かなくなり
ひょっとしたら「山辺」には
20年以上近づいていなかった!
それだけ疎遠となった「山辺町」が
まさかこの私を講演会で呼び戻してくれるとは
夢にも思っていなかった!

7月9日の夕方に山形空港に到着した私を
実に有能な運転手が迎えに来てくれていた!
「運転免許証」を持たず
後部座席にしか座らない私に対して
何の文句も言わず
ぼんやりとした目的地にも
確実に送迎してくれる!
私にとっての彼は
「グリーン・ホーネット」にとっての
「カトー青年」だ!
「カトー青年」との違いを一つだけ述べるとすれば
彼は来月で80歳を迎える
私の実の父親であるという点だろう!
「ゴトー老人」と呼ばれてしかるべき彼の名は
「ごんぼちゃん」!
同級生達が次々と死亡
もしくは老人ホーム入りを決める中
恐ろしいほどの食欲と好奇心で
数ヶ月前には「ハワイ旅行」から単独生還した
不死身の旅人だ!

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30年近くを「大阪」で過ごし
すっかり「うどん」人になった私だが
「山形」に帰るとなれば
食べたい物はやはり「そば」だ!
「どこでもいいからそば屋さんへ!」
ぼんやりとしたそんなリクエストでも
「ごんぼちゃん」は愛車「ゴンボルギーニ」を
時速50kmで飛ばし
子供の頃からよく行っていた
「惣右衛門(そうえもん)」に連れて行ってくれた!

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かくして久しぶりの実家に到着!
1分間に300語を話す「ママ」
相変わらずエミネムばりの単語量で
何かを話し続けた!
そのライムの中には
1分間に平均5人の知らない人が登場する!
そして「それは誰?」と尋ねると
その人を説明するために
さらに各5人の新キャラクターが登場する!
「ママ」のトークは
”会話”と呼ぶよりは
”旧訳聖書”の冒頭に近い!

やがてそうこうしていると
悪友「しぶちん」が極上の日本酒を携えて現れた!
「しぶちん」は
私ではなく兄「よっと」の同級生なのだが
最近ではなぜか
私と遊んでいる時間の方が長い
そんなご陽気な男だ!
どこでどんな展開になったのかは
酔い過ぎて覚えていないのだが
「ごんぼちゃん」が仲良し三人組で
シンガポール旅行をした話になった!
なんとか現地に溶け込みたいと願った彼らは
とりあえずみんなでイスラム教徒の帽子
「ハッジ」を購入したのだと言う!
「ごんぼちゃん」はそこまで話すと部屋からいなくなり
しばらくすると「ハッジ」を持って帰って来た!
3つあった!
他の2人の分まで我が家にあると言う事は
同行者には間違いなく
「しまった!
 いらない物を買ってしまった!」
という後悔があったという事だろう!
仕方がないので
我々はそれをかぶって宴会を続ける事にした!
相変わらずその宴がどうなって終わったかは
特に記憶がない!
”宵越しの記憶は持たない”
それが私の飲み方だ!

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「山形」の朝は「温泉」で始まる!
私の実家からは
歩いて行けるところで2軒!
「ゴンボルギーニ」に乗れば無数と言えるほど
「温泉」がある!
しかもその入泉料は
300円とか350円とか
そんなところだ!
どこもそれぞれに特徴があるため
毎朝を”ひろぐ”事ができる!

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「温泉」を終えると
「ごんぼちゃん」は私を
山形の市街地に降ろして”あばよ”と去って行く!
私はそこで懐かしい街を散歩したり
「映画」を見たりして
やがて”ひろぎ”疲れたら
また「ごんぼちゃん」に迎えに来てもらう!
それがほとんど日課だ!
湯上りの『アベンジャーズ』は
なかなか重たかった!

「山辺」での講演会に向かう途中で
我が家のお墓がある「了広寺」に寄った!
親子で草むしりをして先祖を供養した!
以前知り合いの僧侶に
「幽霊はいるか?」
と尋ねたところ
「個人的にはいないと思いますが
 いないと言うと僧侶の仕事は成り立ちません!」
と返された!
なるほど!
”幽霊がいる”からお墓まいりがあるのであって
”幽霊はいない”と言ってしまえば
お寺に並ぶ物はただの石になってしまう!
レンタル屋で会員証を作る時
職業欄に僧侶と書き込む以上
それはビジネスという事だ!
あまりにも幽霊を否定すると
それは営業妨害となってしまう!
友人の生活を守るためにも
これ以上はなるべく言わないでおこう!

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かくして会場に到着!
19:30開演だというのに
17:30に会場に来て欲しいと依頼された!
事前の打ち合わせがあると言う!
90分の講演でなにを2時間打ち合わせると言うのか!
首をかしげながらも控え室へ案内されると
案の定打ち合わせは5分で終わった!
講演会実行委員で
ナチュラルなスキンヘッドをした「牧野」君と
すぐに仲良くなったので
丁重に”ぶー”をたれた!
私は近所にある
恐らくは「山辺」で”コンビニ”と呼ばれている
肌着姿の老人がお弁当を食べながら接客する店で
「GC」を購入し
何もない近隣を散歩して時間を潰した!
私ぐらいの英語力になると
「ジャイアントコーン」は
「GC」と呼んでいる!

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講演会は実に”ひろいだ”!
何の教訓もなく
何の脈絡もなく
思いつきだけで好き勝手にしゃべり続けた!
客席にはセーラー服の少女から
車椅子の老人までいたが
みんながいっぱい笑って
みんなの首がいっぱい動いた!
なんとも幸せな時間だった!
天井の低い洞窟を
しゃがまずに無理矢理通り抜けたような
そんなヘアスタイルの「牧野」君が言うには
ステージに置かれた見事なお花は
講演会実行委員の一人が
私をイメージして活けてくれたものだそうだ!
公演後その花を活けてくれた女性に
「私がどういう人間かわかってもらった今でも
 あのお花を活けてくれますか?」
と尋ねたところ
「いいえ!」
と即答された!
改めて活けてもらうとすれば
きっと図鑑で見る三畳紀のような
そんな”ニョロギザ”なお花になるのだろうて!

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打ち上げに呼んでいただき
郷土料理の数々をふるまってもらい
たいそうご機嫌に泥酔した!
侍からちょんまげを奪ったような髪型をしている
「牧野」君に
「後藤ひろひとを呼んでおいて
 この飲酒量で済ますのか!」
と丁重に”ぶー”をたれ
そこから山形駅前のバーに移動した!
実行委員の美人さん達にも囲まれ
たいそう楽しく歌って踊って騒いだようだが
”記憶は店に置いていく”
というクールな飲み方を貫く私は
翌日この手の写真が大量に送られて来るまで
二軒目に行った事すら知らなかった!
私と踊る人物が誰なのかは
これまでの文章から察していただきたい!

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講演会の最後に一人の女性が私に質問した!
「山形と大阪でどちらが好きですか?」
講演会のタイトルである
『18>28』は
大阪で過ごした28年よりも
山形で過ごした18年の方が大きい
という意味だった!
しかし彼女にそんな質問をされた時
正直な気持ちで私が答えたのはこんな言葉だった!

「今いない方が好きです!」

山形にいる私は大阪が大好きだ!
けど
今こうして大阪にいる私は
山形が恋しくてならない!
なので明日も山形での出来事を『ひろぐ』に記そう!

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