近頃、働きすぎたせいで心身の体調を崩し、会社を辞めざるを得なくなった人が、よくネットで話題になっている。ニュースサイトでそういう事象が紹介されることもあるけれど、ブログで自ら積極的にカミングアウトする人もいて、Twitterやブックマークコメントではたくさんの同情や励ましを受けている。

けれども、ちょっと恐ろしいことを聞いた。そういうふうに自分の病気をカミングアウトする人は、次の就職が一気に難しくなるのだそうである。それは、そういう病歴のある人を、企業が雇おうとしないからだ。

なぜ企業がそういう人を雇わないかと言えば、理由は二つある。
一つは、その人が自分の会社で働き始めた場合、また病気になられたら困るからだ。仕事が滞るのはもちろん、人材募集や教育にかけた時間や労力が丸々損になってしまう。だから、そういう病歴のある人はなるべく避けようとするらしい。
もう一つは、そういうふうにネットに書かれたりすると、自社の評判が下がってしまうという心配がある。特に、同情や励ましのコメントを多く受けていればいるほど、会社が悪者にされる危険性は高まる。だから、触らぬ神に祟りなしで、そういう人は雇わないようにするのだ。

ところで、企業側がそういうふうに考えていたりすることを、自らの病歴をカミングアウトする人はよく分かっていなかったりする。あるいは、分かっていてもそれと戦おうとする。だからこそ、ネットでカミングアウトをするのだ。
彼らがなぜそれをカミングアウトするかといえば、一番の理由は、ネットで同情や励ましをもらえるからである。そういうことを書いたとたんに、慰めの言葉だけではなく、「そういう社会と共に戦っていこう!」「おれは味方する!」などという、強く勇気づけられる言葉さえもらったりする。
逆に「そういうことを書くと自らの首を絞めることになりますよ」と注意を促してくれる人はほとんどいない。いたとしても、すぐに周囲から「おまえはブラック企業の味方なのか!」などとバッシングを浴びせられ、意見ごと封殺されてしまう。
そうして、ネットで病歴をカミングアウトする人たちに、もっとカミングアウトしろ、もっと社会に呪詛を振りまけ、とけしかけるのだ。

なぜ、こういうことが起こるのか?
なぜ、こういう自分の首を絞めるような行為をする人を誰も止めないのか?
それどころか、後押しさえするのか?
今回は、その理由について考えてみた。