ハックルベリーに会いに行く
世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その26(1,552字)
大友克洋が、背景の描き込みを増すことでマンガとしての読みやすさを確保する一方、江口寿史はキャラクターの新たな描き方に挑戦していた。それは、女の子をリアルな描写でかわいく描くということだ。特に彼は、「鼻の穴」を描くと言うことに強いこだわりを見せた。
当時のマンガにとって、「鼻」というのはすぐれて記号化された存在だった。特に『あしたのジョー』などにおいては「く」の字に描かれ、写実性はほとんどなかった。『あしたのジョー』以外でも、たいていは抽象化されたシンプルな線で描かれ、リアルに描く人はほとんどなかった。
なぜかといえば、「鼻」というのはリアルに描けば描くほど不格好になってしまうからだ。特に美男美女を描く場合は、リアルな鼻にしてしまうとどうしても美しく描けなかった。中でも、美女の鼻の穴を描くというのは至難の業で、あまりに難しいため、もはや記号的な鼻に疑問を抱く人間さえいなかった。
しかし江口寿
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