ハックルベリーに会いに行く
台獣物語40(2,628字)
40
ぼくは、獣道に住んでいたことがあった。
――といっても、それを覚えているわけではない。生まれてすぐのとき、台獣の初めての襲来があって、避難を余儀なくされた。それからは、もちろんずっと獣道の外で暮らしている。最初は避難所での生活だったが、やがて本格的に引っ越した。
だから、獣道に住んでいたといっても、「慣れ親しんだ生まれ故郷」というわけではない。ぼくが知っているのは、父や母から聞かされた思い出話を通じてだけだ。
その意味で、ぼくも日田朋美や黒田耀蔵と同様、避難民だった。ただぼくは、彼らとはまた少し別の事情を抱えていた。それは、ぼくがトモだったことによる。
実は、台獣に蹂躙され今は獣道となった地域の一部に、ぼくたちトモの一族が代々住んでいた土地があった。そしてそのすぐ近くに、エミ子の母の一族――つまりヲキが代々住んでいた土地もあったのだ。
つまり、獣道はヲキやトモにとっても故
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