お金というのは道具である。それは、二つの意味でそうだ。

一つは、文字通りの意味である。
これまで見てきたように、お金の本質は「信用」だ。お金自体は、それを数値化、あるいは実体化したものである。

信用が実体化されていると、信用をベースに形成されている人間社会においては、いろいろと便利なことが多い。そのため、お金というのは道具として大変重宝されている。

では、なぜお金が道具として便利なのか?
例えば、外国へ旅行に行ったとする。そのとき、空港からホテルまでタクシーに乗る。そこで、旅行者と運転手は知らない者同士だ。その場だけの、一期一会の関係である。

だから、普通なら信用を築けない。そして信用が築けなければ、タクシーの運転手としては、旅行者をタクシーに乗せることができない。乗せたとしても、自分にメリットがない危険性があるからだ。

しかし、旅行者がお金を持っていれば、それが信用になる。タクシーの運転