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大西つねきさんの「横浜カジノ反対運動」が失敗する理由(2,396字)
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大西つねきさんの「横浜カジノ反対運動」が失敗する理由(2,396字)

2019-09-16 06:00
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大西つねきさんという政治家がいる。先だっての参院選にれいわ新選組から立候補されていたので、ぼくはそこで初めて知った。

それで、彼の政見放送やYouTubeを見たのだが、かなり面白かった。特に、彼が「資本主義の限界」をレクチャーしていたのが分かりやすく、いろいろと腑に落ちた。

簡単にいうと、今の資本主義社会は「自由競争」にならざるをえないのだが、そうなると勝者の数がどんどんと少なくなって、理論上は最後にたった一人になる。

しかしそうなると、その他大勢の敗者の購買力がなくなるので、たった一人の勝者も経済的に立ちゆかなくなる。そうして、システム全体が崩壊する。それが、今の資本主義の限界だ。

そもそも、今の資本主義は「経済成長」を前提としている。しかし、当たり前の話だが「無限の経済成長」などない。だから、その意味でももうすでに成り立っていないのだ。

そのきしみの最も顕著なあらわれが、「格差社会の拡大」だ。この流れは、もう止めようがない。
我々は、現行の資本主義システムを根本から捨てないと、格差が拡大して大多数の人が生きていくのが困難になるという状況から抜け出せない。だから、資本主義をやめてポスト資本主義に移行しましょう。その手始めに、まずはお金の考え方から変えていきましょう――それが、大西さんの考えだ。

ぼくは、この意見に強く首肯する。ただ、大西さんがそこで掲げている「ポスト資本主義社会への移行方法」は、実行がとても難しいと思っている。

なぜなら、例えば大西さんは「土地の所有を廃止しなければならない」と説いている。しかし、それは難しいということ以上に、多くの人がそもそも理解不可能だ。そのため、賛同を得ようがないのである。

それでも大西さんは、大真面目にそれを実現しようと考えている。彼のもっと詳しい考えを知るには、その著作を読むのがいいだろう。


もちろんYouTubeでもいい。


それでも、くり返しになるが、大西さんやり方では、今の資本主義は終わらないだろう。ただし、ポスト資本主義は、違う道筋で実現すると思っている。その道筋とは、「格差社会がもっと過激に進行する」ということだ。

格差社会がもっと過激に進行すれば、やがて富は一カ所に集中する。今の情勢なら、ほとんどGAFAに集まるだろう。

そうなると、例えば日本の土地なども、ほとんど全てをGAFAが合法的に所有するようになる。そして、GAFAはそれを持っているだけでは意味がないため、ちょうど今さまざまなサービスを無料で提供しているのと同じように、無料で多くの人々に提供するようになるのではないか。そうして、結果的に「土地を所有するという概念」がなくなり、自然とポスト資本主義社会が到来するのだ。

つまり、大西さんの提唱するポスト資本主義社会を実現するためには、競争社会をやめるのではなく、むしろ加速させた方がいい。その意味で、今の安倍政権やアベノミクスこそが、最短でポスト資本主義社会を実現させる存在ともいえよう。そう考えると、むしろカジノを建設した方が、ポスト資本主義はより早く到達する。

おそらく、多くの「格差社会の下位に押しやられている人たち」は、無意識的にそのことが分かっている。だから、安倍政権を支持するし、競争社会を激化させるカジノにはむしろ好印象を抱くのだ。おかげで、反対する人は少ないだろう。だから、大西さんの反対運動も必ず失敗する。

大西さんは、まさに「今の資本主義社会をますます加速させる」という理由でカジノに反対している。そして、反対運動を始めた。
すると、横浜に住んでいるたくさんの多くの人たちが彼の運動に加わった。そうして集会を開き、これからどう反対していこうかと話し合った。

その様子は、彼のYouTubeチャンネルでも見ることができる。ただ、それを見ると分かるのだが、話し合いは全く上手くいっていない。全然まとまりがないのだ。

そのまとまりがない理由を、参加した人たちは(大西さんも含めて)全員が理解していなかった。なぜなら、その理由は運動に参加した人たちの属性にあったからだ。

彼らは、主に三つの理由で運動に参加していた。

一、カジノ依存症の人が増えるのが不安
二、治安が悪くなるのが不安
三、地価が下がるのが不安

この三つは、強く関連している。カジノができると依存症の人が増え、その人たちが犯罪を犯すから治安が悪くなり、そうなると地価も下がる。大西さんの集会に集まった人は、そのことを心配していた。

そして、そんな彼らがどういう属性の持ち主かというと、「横浜市内に土地を持つ高齢の人々」なのだ。つまり、「古い既得権益層」である。彼らは、自分たちが所有する土地を守るために、カジノ誘致に反対しているのだ。

つまり、皮肉にも彼らは今の資本主義社会に賛同している。ポスト資本主義社会を実現するためには必ず手放さなければならない「土地の所有権」を守るために戦っている。彼らこそ、ポスト資本主義の到来を阻む側の最前線でもあったのだ。

これは、大西さんの主張と真っ向からぶつかる。そのこともあって、彼らはちっともまとまらない。

結局、彼らも現行の資本主義社会を是認する層だ。しかし、格差社会の拡大によって自分たちも格差の下位に押しやられるかも知れないと危惧したから、たまたま今のタイミングで反対しているに過ぎない。

これでは、多くの「すでに格差の下位に押しやられた人たち」の支持は得られないだろう。だから彼らは、まずすでに格差の下位に押しやられた人たちを、自分の財産を分け与えてでも助けなければならない。そうして、自らが先頭に立って「ポスト資本主義社会」を目指さなければならない。そうしないと、誰の賛同も得られないだろう。

しかし、そんなことはできっこないので、やはりこの戦いは負ける。そのため、横浜にカジノができることは、もう避けようがないのだ。 
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