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モラハラの世紀を生き抜く(1,756字)
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モラハラの世紀を生き抜く(1,756字)

2020-01-17 06:00
    稲田豊史さんの『ぼくたちの離婚』という本を読んだ。

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    この本は、稲田さんが離婚した男性にインタビューし、その体験談を語ってもらう、というものだ。全部で13人の男性が出てきて、それぞれの離婚経験を語っている。

    この本を読んで思ったのは、離婚の原因には必ずモラハラがある、ということだ。離婚した当人(相手)がモラハラをしている場合もあるが、たいていは親からモラハラされてメンタルを病んでいる。

    それで少し面白いことがあった。稲田さんが、本の宣伝で田村淳さんのラジオに出たとき、「離婚の原因にはモラハラなどがある」と稲田さんが説明したところ、司会をしていたアナウンサーが、このように聞き返した。

    「具体的には、どのようなモラル『ハザード』があったんですか?」

    このアナウンサーに典型的なのだが、多くの人は「モラハラ」を「モラル・ハザード」の略だと勘違いしている。あるいは、モラル・ハラスメントの略だとは分かっていても、意味として「モラル・ハザード」と誤認している人も多い。

    モラル・ハラスメントとモラル・ハザードは似て非なるものだ。モラル・ハラスメントはモラルで相手を縛ることで、モラル・ハザードはモラルが破綻していることである。直接的な暴力や、罵詈雑言など言葉の暴力もこれに含まれる。

    ここで重要なのは、モラル・ハザードをする人はモラル・ハラスメントをしない――ということだ。なぜなら、モラル・ハザードをした瞬間に、相手をモラルでは縛れなくなるからだ。相手を殴っておいて「人を殴ってはいけませんよ」などと相手を諭しても、誰にも相手にしてもらえないだろう。

    このように、モラル・ハザードというのは顕在化しやすい。一方モラル・ハラスメントは、その存在が見えにくい。それゆえ、逆に厄介なのだ。モラル・ハザードとは比べものにならないくらい、深く人を縛る。

    「○○くん。そういうことをしてもいいのかな?」

    このように、穏やかに脅迫してくるのがモラル・ハラスメントである。そしてモラル・ハラスメントは、言い返しにくいのがその最大の特徴だ。だから、より強力に人を縛る。

    引きこもりや『ぼくたちの離婚』に出てくる人格が破綻した男女は、たいていこのモラハラの被害者である。親からモラハラされた結果、逃げ場所をなくし、人格が内側から崩壊している。

    稲田さんは、この本の中で「メンヘラには共通点がない。生まれ育った環境や外見では判別できない」と書いているが、実は「親からモラハラされた」という大きな共通点がある。もちろん、親からモラハラされたかどうかを判別するのも難しいのだが、しかしその親を見れば必ず分かる。なぜなら、モラハラ親というのはたいてい物腰の柔らかい、感じのいい人物だからだ。

    ここが非常に厄介なのだが、モラハラ親は一癖も二癖も「ない」。無味無臭なのである。
    しかし、逆に無味無臭すぎる。気持ち悪いほど破綻がない。そういう親の子供は、モラハラの被害者である可能性が高く、従ってメンヘラと疑ってかかる必要があるだろう。

    ところで、モラハラというのは戦前からあるにはあったが、盛んになったのは戦後からだ。戦後「ホワイトカラー」の仕事が急増する中で、子供をホワイトカラーに最適な人材に育てようとする親が増えた。そうした人たちがモラハラ親化していった。

    そのため、これは単に日本だけの現象ではなく、世界的な現象である。世界的にホワイトカラーが増えた結果、世界中にモラハラ親が蔓延し、その結果メンヘラ子供だらけの世の中になったのだ。そうして、健全な結婚生活を営めない男女が多発し、離婚が増えていった。

    これまで何度か述べてきたが、モラハラの治療においてまずだいじなのは「自分はモラハラの被害者だ」と認識することだ。そうして、「失敗親に育てられた失敗人間」であると自認することである。

    そこからしか治療は始まらないが、しかしこれが難しい。なぜならたいていの人は、自分を失敗作だとは認められない。だから、死ぬまで狂ったままだし、しかもその狂気を自分の子供や、あるいはパートナーにも伝染させてしまう。

    そういうときには、慌てて解決しようとしてもダメで、まずは距離を置く必要があるだろう。21世紀は、そうやって時間かけて、この狂った状況を癒やしていく世紀になるだろう。
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