2008年11月8日、「もしドラ」の企画書を書くにあたって、その内容をどうするか、ダイヤモンド社の編集者である加藤貞顕さんと話し合った。

この時まで、ぼくは自分なりに「もしドラ」をどういう本にするか、考えていた。
そうして、「なるべく普通のビジネス書にしよう」と思っていた。

ドラッカーの解説を、ビジネス書的に書こう。
そして高校野球の話は、あくまでもそのサブとして展開しよう――

そう考えていた。
割合としては、解説が八分で、小説が二分、あるいは七分三分か……そんな頃合いを想定していた。そういうふうに、なるべく「小説を書かない方向」で考えていた。

なぜそう考えていたかといえば、本当は小説を書きたかったからだ。ぼくは小説を書きたかった。この「もしドラ」を、純然たる小説に仕立てあげられれば、それはきっと面白くなるだろうし、その方がより強く訴求するだろう――つまりより売れるだろう――そういう確信があった。