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江戸時代、佐賀鍋島藩の武士たちに伝わる教えをまとめた『葉隠』という書物には、「武士道というは死ぬことと見つけたり」という有名な一節がある。これは、そのままでは意味が分かりにくいのだが、意訳すると「自分が死ぬことを忘れてはならない」というものとなる。
なぜ自分が死ぬということを忘れてはならないか?
それは、自分が死ぬことを忘れると生き方を間違えるからだ。間違えて、損をする。
逆に、自分が死ぬことを忘れないと、正しく生きられ、得をする。それが、鍋島藩の武士の教えである。
この教えがなぜ生まれたかといえば、そもそも人は、「自分が死ぬ」ということを忘れやすいからだ。そして、それを忘れることによって間違いやすい。
では、自分が死ぬということを忘れると、人はどう間違うのか?
それは、自分の人生を俯瞰で見たときには大したことのない問題を、大きく捉えてしまう――ということである。もっと端的にいうと、目の前
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