世の中の常識は、なぜか「嘘をついてはいけない」になっているが、本当は「嘘はついた方がいい」だ。「嘘も方便」などという言葉があるが、そんな生やさしいものではない。実際のところ、「嘘をつかなければならない」くらいの高いレベルが求められる。

子供を観察していて気づくのは、彼らは生得的に、しかもナチュラルに嘘をつくということだ。そして、それでいい。そうでないと、生きていく上で大きな支障となるだろう。

例えば、母親が「もう寝なさい」と言うとき。子供は、本当のところはまだ寝たくないのだから、嘘をつかないとなると「まだ寝たくない」と答えることになる。しかし、そんなふうにいちいち正直に答えるのは手間だし、角が立つ。だから、寝たくないときは聞こえなかった振りをする。つまり「聞こえていないよ」と嘘をつくのである。

思えば、子供の頃のぼくはそれができなかった。もちろん、「絶対できない」というくらいの頑なさではな