ハックルベリーに会いに行く
1994:その20(1,752字)
桑田佳祐はやはりすごいと思う。「歌は世に連れ世は歌に連れ」というが、彼こそはまさに時代を先取りしたシャーマンだった。ユーミンが「世に連れた歌を歌う存在」ならば、桑田佳祐は「世を連れさせる歌を歌う存在」だった。桑田佳祐が歌った歌を追いかけるように、世の中が変化していくのである。桑田佳祐は時代を完全に先取りしていた。
まずデビュー曲の『勝手にシンドバッド』で、女性とうまくいかなくても強がる情けない男を歌う。これは映画の二枚目ではなく三枚目を歌の主人公にしたJ-POPにおける大革命だった。
もちろん、モテない男の悲哀を歌った歌はそれまでもあったが、それらはあくまでもコミックソングという扱いであった。そして当初、『勝手にシンドバッド』もその歌詞の内容からコミックソング扱いであった。しかしそれを聞いていた若い男性の多くは、そのコミック性の裏に溢れ出るほどの詩情を感じた。
そうして感情移入した。みっと
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