ハックルベリーに会いに行く
野球道とは負けることと見つけたり:その4(1,937字)
第一話「死ねなかった男」構成
1945年、22歳の蔦文也が酒をあおっている。場所は鹿児島県の知覧。特攻隊の基地があるところだ。隊員宿舎の自室で、文也は一人、どこからか手に入れた酒をあおりにあおっている。
翌朝。目覚める文也。起きて早々、二日酔いの頭痛を覚える。ふと時計を見ると、大遅刻したと分かる。「ありゃ……」と嘆き、慌てて宿舎を飛び出す。
川沿いの土手を駆ける文也。すると、その足下に野球のボールが転がってくる。拾って飛んできた方を見る。すると、河川敷のグラウンドを、二人の少年が逃げていく。「こりゃ、待て!」呼び止める文也。「どうして逃げるんじゃ」。すると少年たちは項垂れて、「兵隊さん。敵国アメリカの野球をして申し訳ありませんでした!」と頭を下げる。
それに対して、文也は相好を崩し「よかよか。よしそこにおれ」と言う。そして、だいぶ離れた少年に向かって、矢のような遠投。ボールは、音を立てて少
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