
野球道とは負けることと見つけたり:その14(2,098字)
文也の父は教師であった。それも徳島商業の教師であった。だから文也は徳商に行くのは初めは嫌がっていたという。父が教師をしている学校に行くのが恥ずかしかったのだ。
この恥ずかしさには、単に「父だから」ということの他に、もう一つの理由があった。それは文也の父がアル中だったことだ。それもかなり重度のアル中だった。なにしろ勤務先の神聖なる学校にも、酒の匂いをさせていくぐらいだった。だから文也も、入った当初は、上級生から「おまえも酒臭いぞ」とからかわれたという。
そんなふうに、父は教師という聖職にありながら生徒にも知れ渡るほどのアル中だった。アル中の父は、文也をよく池田町の酒場に連れて行ったという。まだほんの子供だった文也を連れて、夜な夜な酒場をはしごした。文也は、その時間が苦痛だった。酔っ払う父や父の知人たちがだらしなく見えたからだ。
だから文也は、父に対して素直な愛情を抱けなくなった。それと同時に
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