Vol.283 結城浩/note(ノート)からの配信/クリエイタと独自ドメイン/中学生からのインタビュー/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年8月29日 Vol.283

はじめに

おはようございます。結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

 * * *

note(ノート)の話。

現在この「結城メルマガ」は、 「まぐまぐ!」と「ブロマガ(ニコニコチャンネル)」 という二つの配信プラットホームから配信しています。 内容と購読料金はどちらも同じです。

2017年の9月から新たに、 「note(ノート)の継続課金マガジン」 という形式でも配信を開始することにしました。 こちらも、内容・購読料金ともに同じです。

「まぐまぐ!」と「ブロマガ」での配信は、 これまでとまったく同じように継続されますので、 「結城メルマガ」をすでに講読してくださっている人には、 何の影響もありませんし、手続きも必要ありません。

新たに「note(ノート)の継続課金マガジン」 での配信も行おうと思った理由の一つは、 購読者さんの「選択肢」を増やそうと思ったからです。

(1)「まぐまぐ!」で講読する場合、 テキストメールと、epub(結城が作ったもの) で読むことができます。

(2)「ブロマガ」で講読する場合、 整形したテキストメールと、Webと、 epub(プラットホームが用意したもの) で読むことができます。

(3)「note(ノート)の継続課金マガジン」で講読する場合、 HTMLメールと、Webと、 epub(結城が作ったもの)で読むことができます。

同じ文章を読む場合でも形式が違えば雰囲気も違います。 多様な形式を用意しておけば、 購読者さんの読みやすい形式を選ぶことができます。 それが「選択肢」を増やすということの意味です。

また、note(ノート)で講読する選択肢を用意することで、 これまであまりリーチできていなかった方にも 「結城メルマガ」をアピールしたいという思いもあります。

試し読みのサービスとして、 「まぐまぐ!」では初月無料、 「ブロマガ」ではひと月分の料金で二ヶ月講読可能、 を提供しています。「note(ノート)」では、 「まぐまぐ!」と同様に初月無料という形式にします。 これは発行者(結城)の設定で決められます。

「note(ノート)」を初月無料にしましたので、 すでに「まぐまぐ!」や「ブロマガ」で結城メルマガを講読している方でも、

 《note(ノート)でも、試しにひと月読んでみるか》

という選択が可能になります。 すでに購読者になっている方でも、ご興味がありましたら、 検討してみてください。

「結城メルマガ」が「note(ノート)の継続課金マガジン」 でも講読可能になるのは、2017年9月1日からです。 講読可能になったら、あらためて告知いたします。 現在は【プレ告知】として情報を公開しています。

 ◆【プレ告知】結城メルマガをnote(ノート)の
  継続課金マガジンからも配信予定(2017年9月から)
 https://note.mu/hyuki/n/n0ae97288d626

なお、今回の継続課金マガジン対応と合わせて、 note(ノート)の「独自ドメイン対応」も行う予定です。 創作活動と関連させて、どんなことを考えているかは、 後ほどお話しいたします。

 * * *

しゃれた言い回しの話。

数学者を機械にたとえた、

 「数学者はコーヒーを定理に変える機械」

という言い回しがあります。

「数学者はコーヒーを定理に変える機械」 というのはしばしば数学者エルデシュの発言と思われていますが、 実際にはアルフレッド・レニイのものだそうです。 上原隆平先生にご指摘いただきました。

ともあれ「数学者はコーヒーを定理に変える機械」は、 数学者の仕事である「定理を証明する」という仕事をうまく表した言い回しだな、 と思います。

生物学的には「ブドウ糖を定理に変える機械」とも言えるかな、 と思いました。実際に頭を動かしているのはブドウ糖ですし……。 でも、「ブドウ糖」では表現としておしゃれじゃないですね。

そんなことをつぶやいていたら、戀塚昭彦さん(@koizuka)から、

 「(A)は(B)を(C)に変える機械」みたいに色々適用できるなw
 (A,B,C) = (ハッカー, レッドブル, コード) みたいな

と一般化したリプライをいただきました。

なるほど!

あなたは、自分のことを、

 「何を何に変える機械」

とたとえるでしょうか。

 * * *

フィードバックの話。

最近できた新しいカフェに妻と二人でランチに行きました。

いつもいく店Aが近くにあるけれど、 せっかくなので新しい店Bに行こうと思ったのです。

ところが失敗。

美味しくなくて、しかも値段が高かったのです。 いつもの店Aの方が安くて美味しいので、 もうこの店Bには来ないよねえ…と二人で話しました。 残念。

そこで思ったのです。

おそらく私たち夫婦は、あの店Bには行かないでしょう。 でも、私たちは、

 店Bにどうして行かなくなったかを、
 わざわざ店主に伝えたりはしません。

「この店は新しくできたので期待したけれど、 美味しくないし、コスパ悪いのでもう来ないです」 そんなことをわざわざ伝えたりはしません。

多くの人がそうだと思います。 ある店が不味いからといって、わざわざ伝えたりしない。 ただ、その店に行かなくなるだけです。

味は人の好みがあるし、値段との兼ね合いも人によるでしょう。 私がイマイチと思っても、そうでない人がいるかもしれません。 でも、もしも、多くの人が「ここにはもう来ない」と判断したら、 早晩経営は苦しくなるでしょう。 そしてその来なくなった人のほとんどが、 「なぜ来なくなったか」という理由を店に伝えません。

経営者にとって、 フィードバックをもらうことは大事です。

フィードバックがなかったら、 お客さんが来ない理由を必死で想像するしかないからです。

サービスを提供する側にしてみれば、 「ほめてくれるお客さんの声」はありがたいものです。 ほんとうに励みになります。 でも、それにも勝るとも劣らない価値があるのが、 「不満を感じたお客さんの声」です。 「ここがよくない」や「ここが変わればいいのに」や 「こうしてほしかった」という不満の声は千金に値します。

必ずしもその声に反応する必要はありません。 またその声をうのみにする必要もありません。 しかし、そういう声があることを知るのは、 サービスを提供し続けていく上でとても大切なこと。 それは「顧客を知る」ことに直結しているからです。

結城は本を書いており、いわば読者に対するサービス提供者です。 ですから、毎日のようにTwitterでの反応を読んだり、 メールで送られてくる感想文を読んだりするのは当然の活動です。 応援メッセージはほんとうにうれしいものですが、 そうではない意見や感想や不満もていねいに読んでいます。 そこで提示された情報のすべてに従う必要はないと思っていますが、 その情報を知ること自体はとても大切だと思っています。 それは「読者を知る」ことに直結しているからです。

結城は本を書く上で、 《読者のことを考える》という原則を守ろうと思っています。 そして、そのためには「読者を知る」ことが必須なのです。

 * * *

ドラマのようなシーンの話。

ある夜のこと。場所は駅のホーム。

背広男性と女性のカップルが、 いかにも別れがたい様子でシリアスにハグしている。

まるで恋愛ドラマの一シーンのようなので、 つい見とれてしまう。

ところが、あまりにも深く抱き合っていたため、 いざ離れようとしたら二人の傘とバッグとカバンが絡み合って、 ハチャメチャになってしまった。

ほぐそうとする二人は、 途中からゲラゲラ笑い出してコメディの一シーンへと場面転換。

何だか楽しい一幕でした。

 * * *

それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • クリエイタが独自ドメインを持つ意味 - 仕事の心がけ
  • 『数学ガール』執筆に関する中学生からの質問 - Q&A
  • おわりに