結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年4月23日 Vol.369
目次
- 数学のポスドク、将来への不安
- 多種多様な仕事をどうやってこなすか - 仕事の心がけ
- 塾講師、生徒におもしろさを伝えたい - 教えるときの心がけ
- 知ったことをどう記録するか - 学ぶときの心がけ
- メタ認知を教えたい - 教えるときの心がけ
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
最近はずっと『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』に取り組んでいます。
先週末にようやく第3章までレビューアさんに送付が済みました。後半戦もがんばって進めます!
◆『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
https://bit.ly/hyuki-note11
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インタビューの話。
技術評論社の技術誌WEB+DB PRESS Vol.109に掲載された結城浩のインタビューがWebで公開されました。インタビューしてくださったのは竹馬光太郎さんです。
- 執筆一本で食べていけるのか?
- 「無駄」な作業が良い本を生む
- 技術書典は書き手と読み手をつなぐ
- 「読者」というテキスト処理系
- 良い文章を書く原則はたった一つ
という内容が含まれていますので、ぜひお読みください。
◆「at the front―前線にて」第3回「筆一本はいかにして実現したか?……」
http://gihyo.jp/dev/serial/01/at-the-front/0003
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では今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
数学のポスドク、将来への不安
質問
大学院で数学のポスドクをしています。
今までは大学に残り研究を続けるつもりでしたが、最近このままで良いのだろうかと思うようになっています。
現在収入が少なく経済的に不自由になっていることや、ポストの少なさなどアカデミアの将来への不安が主な理由です。一つの分野に閉じこもってしまうこと自体への不安もあります。
一方で研究自体は楽しく感じています。数学以外にも興味のある分野はありますが、たとえばもし企業に入ったとして今以上に好きなことができるかどうかわからないのです。
今後の生き方について指針となる言葉を頂ければと思います。
回答
ご質問ありがとうございます。
将来は見えないのでどうしても不安になるものですよね。
とにもかくにも、まずは「情報収集」ではないでしょうか。たとえばあなたが念頭に置いている企業に知人はいないでしょうか。
経済的な不安についても同様に「情報収集」です。まずは概算でもいいから年齢と能力と相場を考えつつ、自分の今後の収支を予測するところから。出回っている情報を鵜呑みにしないように注意しながら「情報収集」です。私自身はアカデミアにいたわけでもありませんし、会社勤めをしていたのはずいぶん以前のことなので、具体的な情報は提供できません。ごめんなさい。
研究自体を楽しく感じていることはたいへん結構なことだと思います。ただ、それと同時に、自分の人生を長い目で見るスタンスも必要になります。あなたにご家族がおありになるか不明ですが、もしいらっしゃるなら、今後のことについて時間を取り、よく話し合うのは必要です。
ともあれ、いろんな方と話してみることは悪くありません。「そもそも私はどんなふうにこれから生きていきたいか」が他者との対比の形で明確になる部分もあると思います。
がんばってくださいね。
後日、質問主さんから届いた文章
以前「将来が不安なポスドク」として質問させていただいた者です。
今回は質問ではありませんが、お礼も兼ねてそれからのことを報告させてください。
情報収集が大切だとのことだったので、大学の相談窓口や就職サイトなどを利用して情報を集めるようにしました。
その結果、自分と合う企業でアルバイトをさせてもらったり、また進路についても「自分にできそうなこと」「自分がやりたいこと」が明確になりました。
運の良いことに、任期付きではありますがしばらく数学の研究を続けられることになったので、もうしばらくは研究をするつもりです。
ですが、色々な人と話したおかげで、さらに先の人生についての不安はかなり少なくなったと感じています。
アドバイスありがとうございました。