Vol.142 結城浩/再発見の発想法/「数学文章作法」シリーズ三作目に向けてのメモ/Q&A - やればいいだけなのに……/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年12月16日 Vol.142

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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しばらくぶりで出題したCodeIQのサルベジオン問題も〆切を迎えました。 今回は196名の挑戦者がありました。多数の挑戦に感謝します。

いつものことですが、最終日の解答者数の伸びがすごい。 一日で5人や3人という人数だったのに、最終日だけ一日で31人も! すべりこみセーフな方が多数……〆切前の攻防ですね。

できるだけ早く採点し、詳しい解説をつけたPDFを解答者に返さなくては。 採点は機械的に行うのですけれど、最終確認は目視でも行いますので、 どうしても時間が掛かるのです。

今回はどんな解答があるかしら……

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英語版の話。

トニーさんによる『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』の 《英訳版》がもうすぐ刊行です。2014年に間に合うかな? 先日、最終PDFをチェックしていました。タイトルは、

 "Math Girls Talk about Trigonometry"

になります。日本語では「数学ガールの秘密ノート」シリーズ名ですが、 英語では"Math Girls Talk about..."というシリーズ名ですね。

「数学ガールが……について話す」というシリーズ名は、 内容に非常にマッチしていると思います。

ミルカさんはもともと、発言がきっぱりとしてかっこいいんですが、 英語になるとそれが際立ちますね。 たとえばミルカさんが、

 「謝る必要はない」

とテトラちゃんに言うセリフは、

 "Stop apologizing."

という二単語になります。おもしろいですね。

"Math Girls Talk about..."シリーズ第三弾Trigonometryも、 多くの読者さんのところに届きますように!

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文章を書く話。

ずいぶん昔のことになりますが、結城も会社勤めをしていました。 プログラマとして、会社のコードを書いていました。 会社で私に関わった人には本当に深く感謝しています。 あの方々がいなかったら、現在の私もないでしょうね。

現在の結城は、一人で文章や数式やプログラムを書いている毎日です。 毎日がとても幸せ。結城が書くことで生きていけるのは、 まわりの方々の大きな助けがあるからです。

考えてみると、私にはたいした能力はありません。 自分が証明した定理はなく、 世界に通じるソフトウェアを開発したわけでもない。 ただ、ささやかな本を書いたり、 ちょっとしたプログラムを書いたりしているだけ。

でも、それなのに、とても(分不相応なほどに)多くの人に応援していただいている。 毎日のツイートでも伝えているけれど、本当に感謝である。 自分のちょっとしたことに反応していただいたり、 改善のフィードバックをいただくことがどれほどうれしいか。

みんなから、結城センセと親しまれることはとてもうれしいし、 毎日ネットで、みんなとわいわいやりとりするのもとても楽しい。

文章という媒体はすばらしい。 指先で手元の機械をパタパタするだけで、自分は唇一つ動かさなくても、 「あなた」に言葉を伝えられるんだもの。

最近は雑誌もきびしいものがあります。 でも、結城メルマガというメディアを応援してくださる方々によって、 私の生活はとても支えられています。みなさんありがとうございます。

ほんの十数年前…になりますが、 コンピュータ雑誌に連載を持っていて、 半年か一年たったらまとめて本にする。そしてその本もたくさん売れる。 そういう時代もあったのです。

でも、ネットの発達は雑誌の存在意義を大きく損ない、 そんな中で、不器用な結城がまだ生活できているのは、 ひとえに、読者さんの応援のおかげだと思っています。 感謝してもしきれるものではありません。

毎月の収入としてのコンピュータ雑誌からの収入…のかわりに、 結城メルマガという「自分メディア」を立ち上げることになりました。 ところが、おもしろいもので、この有料メルマガというメディアが、 私に新しい可能性を示唆するようになりました。

「テキストを使って私は、誰に・何を・どのように伝えるのか」 結城メルマガは、それをあらためて考える場になっているのです。

電子書籍についてはいろんな人が語っていますし、 有料メルマガというメディアについても同様です。 でも、結局メディアはメディアに過ぎないともいえます。 最終的に大事なのは、そのメディアを通して読者が何を受け取るか、です。

結城メルマガはたいへん解約率が低い、と関係者からお聞きしたことがあります。 結城メルマガの内容は、充実しているときも、それほどでもない月もある。 寝込んで一回パスということもある。それなのに、コンスタントに解約率が低いらしい。 結城は、その話を聞いたときに「ああ、これは読者さんの《応援》なんだ」と思いました。 「結城さん、応援してます!」というエールに感謝です!

実は今週、結城メルマガについてよいニュースがあるのですが、 公開可能なときが来たらまたTwitterなどでアナウンスしたいと思います。 どうぞ、お楽しみに。

これからもがんばって結城メルマガを継続していきますね!

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図版の話。

結城は本の図版を最近TikZで描いています。 先日、家で仕事をしていたら、長男から驚かれました。

 「お父さん! もしかして、お父さんがこれまで書いてきた本って、
 図をすべて自分で描いてたの?!」

その質問には結城の方が驚きました。

 「え?! 私以外に、私の本の図を誰が描くの?」

どうも長男は、本の図は専任の作図係が描いているのだと思っていたようです。 そういう本もあるでしょうし、別にそれが悪いわけではないのですが、 結城は自分の本の図は自分で描いていますね。

ちなみに、 『数学文章作法』の各章扉のイラストや挿入図(?)も、 結城が自分で描いています。

でも、《読者のことを考える》という原則に照らし合わせると、 図版は専門家に任せた方がうまくいく場合もあるかもしれませんね。 著者自身が描いているというのは、独り善がりな部分もあるかも。

ふむ……。

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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。

今回は「再発見の発想法」のコーナーで「プロトコル」をお送りします。 技術的な用語の背後に隠れている「発想」をつかみましょう。

それから「数学文章作法」シリーズの三作目に向けて、 あれこれ考えていることのメモをお届けします。

そして「Q&A」のコーナーでは、 「やらなくちゃいけないと思っているけど、なかなかできない」 というお悩みにリプライします。

では、お読みくださいね!

目次

  • はじめに
  • 再発見の発想法 - Protocol(プロトコル)
  • これから無くなる仕事 - 仕事の心がけ
  • 分けて考える、分けて書く - 「数学文章作法」シリーズ三作目に向けて
  • Q&A - やればいいだけのことが、なかなかできなくて……
  • おわりに