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Vol.151 結城浩/数学文章作法のスケッチ(7)/手書きノートのスナップショット(12)/
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Vol.151 結城浩/数学文章作法のスケッチ(7)/手書きノートのスナップショット(12)/

2015-02-17 07:00
    Vol.151 結城浩/数学文章作法のスケッチ(7)/手書きノートのスナップショット(12)/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年2月17日 Vol.151

    はじめに

    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

     * * *

    新刊の話。

    『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』は、 いったん作業が編集部に移ったものの、 結城の方でも並行してレビューアさんの指摘事項の検討に入ります。

    レビューアさんからのメールは、 すでにメールボックスにたくさんたまっています。 これから、ひとつひとつを吟味しつつ、 指摘事項のどれをファイルに反映すべきかを検討するのです。

    レビューアの指摘を検討するときには、 まず全体をよく把握して、「どこまでが反映済みか」 「どこからが未反映か」をしっかり管理することが必要です (当然のことですけれど)。

    こういった「レビューのやり方」については、 以前書いた『数学文章作法 推敲編』にまとめました。 あらためて考えてみると、そこに書いたやり方は確かに有効ですね。 自分の本が自分自身に役立つのはうれしいものです (〆切を守りなさいと書かれた自分の文章がぐさぐさと刺さります)。

    今回の『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』は、 そのタイトルの通り「微分」がテーマです。 「微分」は高校数学で重要な役割を果たしていますが、 「三角関数」と並んで嫌われたり苦手意識を抱かれたりしがちな分野でしょう。

    数学ガールたちとの楽しい対話とていねいな歩みによって、 本書の読者さんが微分に親しんでもらえたらいいなと思っています。

    新刊が出るのはいつも楽しみ!

    がんばって校正を続けなくては……

     ◆『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』
     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382317/hyuki-22/

     * * *

    SNSの話。

    SNSはいろんな問題を引き起こすきっかけになることもあるけれど、 よい可能性もたくさんあると結城はよく思います。 結城はTwitterがとても居心地がよく、いつも入り浸っています。

    毎日、TwitterやFacebookで、 さまざまな人のつぶやきが流れているのを見ていると、 しみじみと幸せな気持ちになります。 まあ「さまざまな人」といっても、 自分のタイムラインに流れている人のつぶやきですけれどね。

    いろんな人のつぶやきが流れていると、

     「ああ、日常が流れているなあ」

    と感じるから幸せなのかもしれません。 たわいもないジョークもよし、日常のあいさつもよし、 ときには議論も少し。おもしろいニュースもちらほら。 そんなTwitterから日常を感じるのですね。

    あ、それで思い出した。

    映画"Gravity"でサンドラ・ブロック演じる主人公の宇宙飛行士が、 たった一人で宇宙に残されたときのワンシーン。

    緊急事態が発生し、宇宙船の中で孤独の中にいる主人公。 そこに地上からの無線が偶然入ってくる。 懸命に主人公は緊急事態を訴えるけれど、 どうも通信相手は英語を介さないようだ。

    そこから犬の吠え声が聞こえる。 通信相手が犬の真似をして「ワオーン」という声を上げる。 それに合わせて主人公が「ワオーン」と声を上げる。

    "Gravity"の宇宙飛行士は、たった一人で宇宙にいる。 地球に帰れる可能性はとても低い。 でも地球は地球で回っていて、日常生活を送っている。 半泣きの主人公と通信相手が「ワオーン」と声を合わせる。

    あのシーンは強く印象に残っている。 とても本能的な、他の存在と同期したいと思う気持ちとでもいうのだろうか。 あれは何だろう。

    あなたは生きている。わたしも生きている。 直接は会えないし、環境も違う。 でも、同じ時をいま生きている。

     「ワオーン!」

    そんな叫びを共に上げたくなる気持ち。

    SNSを通して、一度も会ったことのない人とメッセージを交わす。 現代は何という不思議な時代だろう。

    結城は、SNSで出会う多くの人に向けて、 「私のそばにいてくれて、私にメッセージを送ってくれて、ありがとう」 と言いたくなることがよくある。

    あなたは生きている。わたしも生きている。 直接は会えないし、環境も違う。 でも、同じ時をいま生きている。

     「ワオーン!」

     * * *

    亡くなった方の話。

    先日、とある事情があって「弔電の打ち方」を調べていました。 あたりまえですけれど、クレジットカードがあれば ネット経由ですぐに弔電を打てるのですね。

     ◆弔電の申込み
     http://www.ntt-east.co.jp/dmail/okuyami/

    上のページを読んでいたら「故人がキリスト教徒の場合には、 仏教用語を使わないようにしましょう」と書いてあり、なるほどと思いました。 仏教用語というのはたとえば「お悔やみ」「冥福」「成仏」「供養」「弔う」 「仏」「僧」などですね。もちろん、故人がクリスチャンかどうかを 知らない場合には配慮は難しいですけれど。

    そういえば教会では「クリスチャンが亡くなる」ことを、 「神さまのみもとに召される」や「帰天する」や「召天する」などと表現しますね。 クリスチャン本人にとっての死は、自分の住まいが用意されている天国へ帰り、 神さまに会えるときだからです。

    会社などでは、 宗教色を減らしたニュートラルな表現が必要になる場合もあるでしょう。 ある方から「謹んで哀悼の意を表します」という表現を教えていただきました。 これもまた、なるほどです。 故人が「成仏」するのか「帰天」するのかには言及せずに、 自分の側の気持ちとして「哀悼の意」を表すというわけですから。

    そんなことをつらつらと考えました。

     * * *

    映画の話。

    今年(2015年)の3月に、 映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」が公開されます。 アラン・チューリングの伝記をもとにしたもので、主演はカンバーバッチとのこと。

     ◆カンバーバッチ主演映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
     http://www.fashion-press.net/news/12758

    「エニグマ」というのは暗号機械の名前で、確か「謎」という意味だったと思います。 ナチス・ドイツが戦争の暗号通信に使い、 チューリングはその解読に大きな役割を果たしました。 どんな映画になるんでしょうか。

     ◆『エニグマ アラン・チューリング伝』(アマゾン)
     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4326750537/hyuki-22/

     * * *

    数学的な彫刻の話。

    「スタンフォード大学でデザインを教えているジョン・エドマークが、 幾何学とアートを混ぜ合わせたクールな動く彫刻を3Dプリンターで制作した」 (下記Webサイトより)

     ◆フィボナッチ数列が生み出した、幻想的な動く彫刻(動画あり)
     http://wired.jp/2015/01/21/fibonacci-zoetrope-sculptures/

    この動画は確かに不思議です。ストロボ撮影をうまく使って、 幾何学的な立体図形がうにゅうにゅと動いているのです。 無機的なような有機的なような、美しいけれど、少し気持ち悪くもある立体。 見てはいけないものを見てしまったような、そんな感覚も引き起こします。

    こういう感覚を生み出すものをデザインできる力は、 いったいどこから来るんでしょうね。

     * * *

    「真似る」という話。

    先日、TEDxSeeds2011での平田オリザ氏(演出家)の講演が話題になっていました。 人型ロボットを「自然な動き」にするために、演出家が指示するという話題です。

     ◆人型ロボットの動きはなぜ不自然なのか?
     研究者の難問を20分で解決した、ある演出家の結論
     http://logmi.jp/36575

     ----
     「ここは0.3秒縮めてください」とか
     「手の角度も少し上げてください」とか20個くらいダメ出しをしました。
     20分くらいかけてプログラマーが改良してパッとやると、
     格段にリアルになったんです。
     ----

    何か背後の理屈を作るのではなくて、 ともかくこういう動きにするというアプローチのようです。

    演出家のいう通りの動きをするようにプログラミングすると、 ロボットの動きは見違えるように自然な動きになるらしいですね。 当たり前といえば当たり前なのかもしれませんが、興味深く思いました。

    「まなぶ」は「まねぶ」から来ているとか、 「意は似せ易く、姿は似せ難く(本居宣長)」に通じるものを感じます。

    話は逸れるかもしれませんが、プログラミングを学ぶときに、 プログラムを書き写す「写経」という方法があります。 ただ目で見るだけではなくて、自分でそのプログラムをタイプする。 それによって何かが身についていく。それもまたおもしろい話です。

    さらに話は逸れて、Blekというゲームを思い出しました。 これはAppleの「BEST OF 2014 今年のベスト」として選ばれたものの一つ。

     ◆Blek
     https://itunes.apple.com/jp/app/blek/id742625884?mt=8

    このゲームでは、複雑に配置された丸いターゲットを消すのが目標なのですが、 その消し方がおもしろい。

     「自分がなぞった一筆書きの動きが繰り返される」

    ことでターゲットを消すのです。つまり、人間はコンピュータに「こう動いてね」と お手本を示す。具体的にはタブレットを指でなぞって経路を示すわけです。 コンピュータはユーザの行動を機械的に繰り返すことで、 ゲームを進めていくのです。

    ターゲットの配置から正しくパターンを見抜き、 そのパターンの一つを「うまく例として提示」できれば、 ステージを解くことができます。

    Learn by Example (例によって学ぶ)に通じる発想だなあと思いました。

     * * *

    さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。

    今週は「数学文章作法」シリーズの第三弾「執筆編」(仮題) の執筆状況をライブで(?)お届けする「数学文章作法のスケッチ」です。

    Web連載を書いているときの「手書きノートのスナップショット」 と合わせて、どうぞお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 数学文章作法のスケッチ(7) - 順番を練り直そう
    • 手書きノートのスナップショット(12)
    • おわりに
     
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