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第181回 怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ(1)
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第181回 怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ(1)

2018-07-05 23:30

    オンナのウラガワ ~名器大作戦~
    第181回 怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ(1)


    ◆もくじ◆

    ・怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ(1)

    ・最近の志麻子さん 
     7/17(火)「X-ファイル」イベントに出演
     8/5(日)「オメ★コボシ42」開催
     角川ホラー文庫より『現代百物語 終焉』発売
     夏に某大型映画スピンオフドラマに出演予定
     河崎実監督映画に出演予定
     TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
     「岩井志麻子のおんな欲」連載中
     カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
     MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

    ・著者プロフィール

    ===

    いよいよ7月になり、怪談の季節も本番!
    夏にぴったりのゾッとする実話をお届け。
    岩井さんならではの引き寄せ具合を感じます。
    岩井さんと同業の和枝さん(仮名)は、きっちり資料を集め取材をするタイプの書き手で、SNSなどで怪異の体験談を募集している。そんな和江さんに、ある女性から電話がかかってきた。
    現在進行形のお話です!


    バックナンバーはこちらから↓

    http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

    2014年11月~16年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
    2017年1月「自分を重ねてしまう若者たちのウラガワ
    2月「冬に聞いた奇妙な怪談のウラガワ
    3月「春のさなかに聞いた怖い話のウラガワ
    4月「木の芽時な人達のウラガワ
    5月「五月だけどさわやかになれない人たちのウラガワ
    6月「面識なしでも喜怒哀楽を喚起する人々のウラガワ
    7月「ほんのり怖い人達のウラガワ
    8月「真夏なのに秋の予感な有名人たちのウラガワ
    9月「私が見たテレビの中の人のウラガワ
    10月「大人だけど枯れるには早い人たちのウラガワ
    11月「年下韓国人夫とのアジア旅のウラガワ
    12月「捨ててもいいじゃないかのウラガワ
    2018年1月「命や生きることについて考えたウラガワ
    2月「人はなかなか変わらないのウラガワ
    3月「きれいに卒業できない女たちのウラガワ
    4月「新たな出会いの不気味なウラガワ
    5月「良い季節でも人は病むウラガワ
    6月「『有名な男の女』だった二人のウラガワ


    ※2014年10月以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

    2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
    2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

    ===


     やってきましたよ、七月が。何がって、怪談の季節よ。考えてみればお化けや幽霊の話は夏の風物詩だから、すでに六月には怪談の季節に入っているわけだけど、六月だとまだ早い感じがする。八月だと遅い気がする。あくまでも、私個人の感覚で。

     何はともあれ、今月は怪談をテーマにする。例によって個人や場所などを特定されないよう、全編に渡って登場人物はみな仮名、背景などに少々の脚色をしている。

                        ※

     同業者の和枝さんは私と同じく実話怪談を書いているが、私よりはるかにきっちりと資料を集め、取材に赴き、綿密に記録している。

     私はざっくりと、目の前に来た人に「最近なんか怖い話ない?」と聞き、「怖い経験した人がいたら紹介して」と頼み、その際も簡単なメモを残すだけで録音などはしない。
     言い訳がましいが、私の場合はあまりに記録をきちんと残すとそれに引きずられてしまい、「これも書かなきゃ」「あのエピソードを絶対に入れなきゃ」と、そちらに必死になるあまり、肝心の怪談の核みたいなものをとり逃してしまうのだ。

     和枝さんの書くものは逆に、緻密な取材と正確な記録が迫力と迫真性を持っている。だから和枝さんが私のスタイルを取ると、 
    「なんか、すべてを創作してしまいそうで怖い。せっかくの実話なのに」
     となるそうだ。先日そんな和枝さんと飲んだとき、こういう話を聞かされた。

    「私のフェイスブックやツイッター、WEB連載しているページで『体験談募集』と告知してるのね。いろんな人が全国各地から、いろんな体験談を寄せてくれる。
     あからさまな作り話や、どこかの怪談本に載ってた話をそのまんま語る、あるいは可哀想だけど精神的な疾患から来る妄想や幻覚ってのは、聞くだけ聞いて『ごめんなさい、これは諸々の事情から掲載できません』とお断りするんだけど。
    『残念ながら、それは怪談ではないです』といわなきゃならない場合があるんだわ。
    『死んだおじいちゃんが夢に出てきた』……これだけでは、ただの夢の話」

     なるほどなぁと、膝を打った。夢に死者が出てくるだけで霊現象という考え方もあるらしいが、たとえば夢を見ただけで終わらず、その後にお母さんもまったく同じおじいちゃんの夢を見ていたのがわかった、とか。
     おじいちゃんが夢の中で風呂場を探せといっていたので、気になって排水口のカバーを開けたら失くしていた指輪が見つかったとか。
     おじいちゃんの夢を見たその日に、おばあちゃんが急死したとか。

     夢から一歩踏み出すというのか、現実とリンクしなければ実話怪談としては成り立たないのだ。それを聞いて、苦い記憶がよみがえった。

     たびたびここにも書いてきたが、私は現在お世話になっているホリプロに所属する前、押しかけマネージャーがいた。

     そのL美は仕事がまったくできない、やろうとしない、関係者みなさんに大小さまざまな迷惑をかける困った存在だったが、それ以前の問題があった。

     フランス貴族と古城に住んでいただの、世界的な大企業の会社社長にプロポーズされているだの、大富豪とギリシャに十年くらい暮らしただの、ものすごい虚言症だったのだ。

     今から思えば、そんなものすべて信じた私もどうかしていた。要するにL美も、延々と夢の話を語っていたのだ。

     怪談の語り手と書き手に立場を変えれば、「死んだおじいちゃんが夢に出てきた。以上、終わり」というのを「ものすごく怖い怪談だ」と震えあがり、実話として正確に記録しなきゃと必死に書いていたようなものだ。

     考えてみれば、華麗な古城だの豪華な地中海クルーズだの有名な婚約者だの、ただの一度も写真を見せてもらったこともなければ、連れて行ってもらったこと、会わせてもらったこともない。L美の周りに、金回りの良さげな男など影も形もなかった。

     和枝さんなら、嘘だと見ぬいて瞬時に切った場合は別として、フランス貴族の末裔や現存する古城を調査し、世界的な大企業の社長とL美がいっさい会った形跡がないことも調べ上げ、『これは掲載できません』となるだろう。

     だが逆に、現実とリンクしてないから信じた、というのもある。婚約者のなんちゃらファンドに投資しろとか、ダーリンが持っているルネッサンス期の巨匠の絵画を格安の百万円で買わないかとか、L美はそういう詐欺行為はいっさいしなかったのだ。

     そういう悪い現実とリンクさせていれば、私もL美を即座に怪しみ、早いうちから「みんな作り話だ」と見破っていたはずだ。

     そもそもL美の最大の目的は、「芸能人のマネージャー」という立場と、すごい嘘で注目を集めて「その場の中心になること」「今ここですごーいといわれてうらやましがられること」で、給料以上の金銭ではなかった。

     和枝さんの体験談募集に応募してくるのは、彼女の読者、ファンばかりだ。きれいな彼女は昔レースクイーンやモデルをしていたこともあり、男性ファンも多い。

     自分の体験談が彼女によって文章化され書籍化されるという喜びもあるが、ただ彼女と電話ででもしゃべりたい、イベントに行って彼女に声をかけてもらいたいというのもあるから、中には無理に怪談を創作する人、夢の話をするとかない人もいるのだった。

     そんな和枝さんに、淑子という女性から電話がかかってきた。実は淑子はごく短い間だったが、波乱万丈の人生を歩んできたすごい人ということでテレビや週刊誌などで取り上げられており、私も何度か目にしていた。

     名家に生まれたのに不義の子というので施設で育ち、優等生だったのに名門大学を中退してヨーロッパを放浪し、貴族の愛人、大富豪の愛人になり、帰国後はコンサルタント業を始めて世界中のVIPが顧客に……
     という、まるで昔の大映ドラマか韓国ドラマみたいな生い立ちと半生だ。

     へ~、こんな人いるんだと感心したが、特に興味を持つこともなく忘れていった。久しぶりに彼女の消息を聞いたのは、和枝さんの口からだった。
     
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