オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第307回 まだ楽観視できない未来を思うウラガワ(1)
◆もくじ◆
・まだ楽観視できない未来を思うウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
5月公開の映画『死刑にいたる病』に出演
「夕やけ大衆」で「四畳半ホラー劇場」を連載中
『でえれえ、やっちもねえ』角川ホラー文庫より発売中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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まだまだ気楽な海外旅行なんて遠い先といった現状。
そんな新年の一発目は、「本当にそれは終結したのか」「未来を楽観視していいのか」といったテーマでお届け。
先日出演した某BS番組で、一緒にミステリースポット巡りをしたM先生にいろいろ質問をぶつけてみたところ……。
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2014年11月~20年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2021年1月「ゆるく共存していくことを考えさせられるウラガワ」
2月「いつの間にか入り込む怖いもののウラガワ」
3月「もはや共存するしかないあれこれのウラガワ」
4月「変わらぬもの、変わりゆくもののウラガワ」
5月「子どもっぽい大人、大人になっても子どもな人のウラガワ」
6月「ドライになり切れないウェットな物事のウラガワ」
7月「ホラーの夏なので怖い怪談実話なウラガワ」
8月「夏といえばの怖い話・奇妙な話のウラガワ」
9月「歳を取れば大人になれるわけではないウラガワ」
10月「この歳になって初めて知ることもあるウラガワ」
11月「「どこで逸れたんだろう」と考えてしまうウラガワ」
12月「人生そのものがお楽しみ会のウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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とりあえず謹賀新年。これを書いている今現在、私の最後の海外旅行は2020年1月のシンガポールとなる。そのとき新型肺炎はもう発生していたが、まだ報道されておらず、滞在中も噂さえ聞かず、帰国の際も空港は何もかもが通常通りだった。
帰国後は都内で大勢の新年会もやったし、初っ端の仕事はお笑い芸人とのディープキスだった。なんという嵐の前の静けさ。春からは怒涛の流言飛語などにも踊らされ混乱しながらも、年内には何もかも通常に戻る、といった楽観論もあり、期待も持ったのに。
年内どころか翌年も自粛と規制に縛られ、どうにか生活は落ち着いてきた今年の始めもなお、気楽な海外旅行なんて遠い先といった状態。だから新年の一発目は、「本当にそれは終結したのか」「未来を楽観視していいのか」といったテーマでお送りする。
全編に渡って登場人物はみな仮名、背景にも多少の脚色を加えてあるのもよろしくね。
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私は子どもの頃からホラーなあれこれ、ミステリアスな世界が好きで、ついにはホラーを専門とする作家になってしまったほどだ。
これもしょっちゅう表明やら言い訳やらしているが、いわゆる霊感はゼロ。正直、幽霊だの宇宙人だの異次元だの超能力だの、まぁ半信半疑だ。占いや予言は頭ごなしに否定もしないが、いいことしか信じないというタイプ。
信じることと好きであることは、別に一致しなくてもかまわないだろう。あいつ嫌な奴だけど仕事はできるよね、とか。あの人は良い人だけどお金に関しては信用できないとか、そういう両立や併記ができるのが大人ではないか。
そんな私が先日、某BS番組に出演し、ホラーとミステリー界では重鎮の一人であるМ先生と都内ミステリースポット巡りをした。
さすがМ先生、博識だし語りもおもしろいし、すっかり信頼し魅了されてしまった私は、カメラが回っていないところでもいろいろ質問をぶつけてみた。М先生、よどみなくすべて丁寧にわかりやすく、説明や解説をしてくださった。
「ずばり、前世だの生まれ変わりだのって、あるんですか。たとえばマリー・アントワネットの生まれ変わりを自称する女って、世界中にいますよね。でも、似ても似つかぬ姿ばかりでしょ。思いっきり日本人だったりもするし」
「生まれ変わりの証明とは、『記憶』なのです。マリー・アントワネットだったときの記憶があれば、どんなに外見が違っていても、その人は生まれ変わりなんです」
「でもそれ、誰でも読める資料や有名な映画、漫画、伝記みたいなもので知ったとかでも、私がマリー・アントワネットだったときの記憶よといえますよね」
「それどころか、たとえば偽の記憶を作って、それを特殊なUSBメモリに入れて、人の頭に差し込んで脳内にダウンロードしたら、偽の記憶が刻まれますよ」
「それ、怖いです。そんなことされたら、私もマリー・アントワネットの生まれ変わりだと、真顔でいい張れるじゃないですか」
なんだか、そのたとえ話にはものすごく戦慄してしまった。脳内をまったくそういう偽の記憶で満たされ、岩井志麻子としての記憶をすべて消去、上書きされてしまったら、私という人はどこにいってしまうのだ。
死んで異郷に別人の姿で生まれ変わる、ということよりも、それはずっと怖い気がする。この私が今すぐ私でなくなるのは、死ぬのとは別の喪失だ。
それとは違う話だが、今は夫婦の精子と卵子を代理母の子宮に移植して産んでもらったり、夫の精子と他人の卵子を自身の子宮に移植し、遺伝子的にはまったく母とは他人の子でも自分の子として出産、ということもできている。
今現在、それらの出産の形はありふれたものではないにしても、広く認知されてきているし、私の身近にもいる。昔の人には、想像すらできなかった魔法の世界だろう。
様々な問題や論議はあるが、不妊に苦しむ夫婦を救ったという評価もある。どんな形であれ、生まれてきた命は等しく尊い。それは本当だと思う。
では将来、脳内に偽の記憶をダウンロードするのも、いいこともある、となっていくのか。逆に、ものすごく嫌な記憶を消したい、心的外傷となっている記憶を完全消去できる、となったら、救われる人もいるだろう。私も、完全消去したい記憶はある。
ただ、根本的な問題解決にはならないか。その傷を与えた加害者が、けろっとして放免される、なんて問題も新たに出てくるし。
何はともあれ、マリー・アントワネットがSNSを駆使できてたら、ハリウッドスター以上のフォロワー獲得、超インフルエンサーになったよね。何もかもが映えすぎるし。
「話変わって、宇宙人っているんですか。見たことないんですが」
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