休校日にクラスメイトの玲子ちゃんと会った。帯広に親戚がいる彼女は、夏休みを当地で過ごしていた。玲子ちゃんは交際している彼がいた。夏休みに初めて一緒に一泊過ごしたということだった。
「盛りがついた動物みたい。マジでヤバいよ、亨の奴」
私はこのとき、彼女が付き合っている彼と、同じ呼び名の男性と交際していることにはっとした。
自分の彼の名を呼び捨てにされている奇妙な感覚があったけれど、玲子ちゃんの彼と徹さんとでは、比較する気にもならなかった。
彼女は、聞いてよと、前に乗り出して話し始めた。
「朝まで一緒にいられるなんて初めてだから、超楽しみにしてたのに、一晩で何回やれるか試してみようって亨が言い出すもんだから………」
私は同級生の誰からも経験者だと思われていて、その手の相談を受けることが多かった。初めて私は今までとは違う実感を持って彼女の話を聞くことができた。
二学期が始まっても、私と徹さんの仲は続いていた。平日は毎日公衆電話から電話をして声を聞いた。週末は手紙を書いた。「会いたい」「愛してる」という言葉を何十回も交わし、辛抱強い私が電話口で泣き出した。
九月に徹さんはやって来た。隣町の飛行場でレンタカーを借り、高校の門の傍に車を停めて私の下校を待っていた。私は、授業を終えて、職員室の隣に設置されている緑の公衆電話から彼の携帯に電話をした。
「もういるよ」と彼は言った。
「周りに他の車は停まっていないからすぐ分かるよ」と言う彼のもとへ駆け付けた。
こんな田舎で幻滅されないかということは気掛かりだったけれど、電話の声はいつもの優しい彼だった。私の姿が見えると、彼は窓から顔を出して、花菜ちゃん、こっち、と言い手を振った。
徹さんは、きらきら輝いていた。助手席のドアを開けると徹さんの香りがした。彼が私の手を握り、顔を近付けてきたので、「ここじゃ駄目」と制し、車は発進した。助手席から見る彼は素敵だった。ハンドルを握る姿にくらくらした。
金曜日の今晩は、西の祖母の家に近い旅館に宿を取っていた。週末は隣町のグランドホテルを予約している。今日は、あまり遅くなるわけにはいかなかった。バスの時刻に合わせて帰宅しなくては祖母が心配して大騒ぎになってしまう。
私は平日の夜に出掛ける習慣が全くなかったので、帰宅してから彼に会いに行くわけにもいかなかった。
小さな旅館は、彼に泊まってもらうのは申し訳ない宿だったけれど、彼は、「花菜ちゃんに会えるならどこだって構わないさ」と、言ってくれた。
旅館は畳の部屋で、彼は部屋に入ると私を強く抱き締め「会いたかったよ」と、言って熱いキスをした。
私が手を洗っているうちに、彼は押入れから布団を出して敷いていた。私が日本間に戻ると、「こっちに来てごらん」と彼が言った。
待ち焦がれていた言葉だった。夏休みの情事以来、彼の「ごらん」という言葉が耳に付いて離れなかった。
心から待ち侘びた交合だった。初体験から一カ月経っていないというのに私の膣は、徹さんを欲して濡れていた。クリトリスでしかイケない私が、彼のペニスを欲しがったのには自分でも驚いた。