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甲状腺検査のデータを独占する福島県立医大が、住民より学会発表を優先
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甲状腺検査のデータを独占する福島県立医大が、住民より学会発表を優先

2014-12-02 08:35
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    木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                       2014/12/02(No.018)
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    [目次]
    1.東電福島第一原発事故トピック
    甲状腺検査のデータを独占する福島県立医大━━鈴木教授の釈明に傍聴席は失笑
    2.気になる原発事故ニュース
    3.編集後記
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    1.東電福島第一原発事故トピック
    甲状腺検査のデータを独占する福島県立医大━━鈴木教授の釈明に傍聴席は失笑

    <福島県立医大のデータ独占>
     福島県の県民健康管理調査が、住民無視の様相を呈している。
     といっても、始まった当初から実施主体の福島県が秘密会を開催するなど、住民を向いているとは言い難い進め方が問題になっていたので、それほど驚くことではないかもしれない。
     今回の問題は、県から委託を受けて甲状腺検査を含む県民健康調査業務を実施している福島県立医大が、甲状腺癌の手術の適応症例データを独占し、公表しないことにある。
     癌の大きさの詳細や転移の有無など、手術症例の具体例は、討会後の記者会見では1年以上前から公表を求める声が上がっていた。今年に入ってからは、検討会や、検討会の下に設置された「甲状腺評価部会」でも委員からデータの開示要求が出ていた。
     しかし福島県立医大の鈴木眞一教授は、学内での検討が必要、個人が特定されるなどと言い続けて、公表しなかった。14年8月24日の検討会でも、同じ理由を述べて公表を先送りしていた。
     ところが、驚いたことに鈴木教授は、8月28日の日本癌治療学会で手術適応症例を発表したのである。検討会で、公表は検討が必要と説明した4日後だった。いったい福島県立医大は、どこを向いて県民健康調査をしているのだろうか。

    <データ公開拒否の4日後に学会発表>
     福島県が2014年8月24日に開催した県民健康調査の検討会で、福島県立医大の鈴木教授は、同年6月30日までの子どもの甲状腺検査の結果、103人が悪性または悪性疑いの癌だったと報告した。このうち57人が手術をうけて、悪性が確定していた。
     あわせて鈴木教授は、初めて「手術の適応症例」について部分的な説明を行った。手術の適応症例は、6月10日に開催された「甲状腺評価部会」で委員から、情報公開を求める声が上がっていたことに対応したものだった。
     資料によれば、福島県立医大の治療方針は、関係学会による診断ガイドラインなどに沿って決められていた。例えば手術前の腫瘍の大きさが10ミリ以上で、リンパ節転移や甲状腺被膜の外への浸潤や遠隔転移がある場合には、「絶対的手術適応」とになるという。
     一方で小さな癌であってもリンパ節転移や遠隔転移があったり、反回神経(声帯を動かす神経)や気管に近い場合は手術適応とされており、今回の手術のケースでは、悪性または悪性疑いと診断された場合は、こうした基準に従って関係者の同意を得た上で「治療を行っている」としていた。
     この説明に対して春日文子委員から、年齢や市町村を伏せた形でいいので、それぞれの患者の症例について具体的なデータを示してほしいという要望が出た。
     すると鈴木教授は、「まず、こういうデータを我々が出す前に、検討委員会で確認議論してほしい」と要求。「その中で、我々の方で出せるものを判断させていただきたい」と要求した。
     つまり、検討会からの正式な要請があれば検討していく、自分たちの一存では出せない、という釈明といえた。
     検討会後の記者会見で星北斗座長は、「データがもらえるかどうかということを(検討会から)提案し、議論が始まったということ」だという認識を述べた。鈴木教授も、治療に関しては「一定の報告義務がある」としつつも、「すべての治療のアウトカム(情報提供)は別」なので、「検討委員会の中でどこまで出すべきかを検討してほしい」と述べた
     ところが鈴木教授は、この検討会の4日後、「どこまで出すかを検討会で議論してほしい」と強調していた手術の具体例を、自身の研究成果として学会で発表したのだった。 
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