七五三の朝のことだった。小さなアクセサリーボックスから指輪を取り出していた妻を以前から興味津々に見ていた娘が「あたしも」とせがみ始めた。待ち合わせ時間に遅れてしまうこともあり、また娘が主役だからという寛大な心もありで、彼女が望む朱色の石が入った指輪をぶかぶかのまま親指につけさせ出掛けてしまったのがそもそもの間違いだったのかもしれない。