相手の耳元に口を近づけて小さな声で告げる秘密。それが一般的な内緒話の定義だろう。ところが娘のそれは少し違う。ねえねえ、ちょっとないしょにしてほしいことがあるんだけど、と相手の耳に自分の耳をくっつけて、小さな声で話す。しかも他に誰の耳を気にしなくていい場ですることもあるし、何より伝える内容があえて秘密にすることもないようなものでもないよなと首を傾げたくなることばかりなのだ。それでも「わかった? だれにも言っちゃだめだよ」と念押しする彼女にとっては胸に秘めておいて欲しいことなのだろう。だから当然このような公の場では書かないし、妻にさえ話さずにいる。