この十年、毎日のように見ている浜辺の海水が初めて見るくらい沖に引いていた。月の引力が四十五度の位置で働いていることによる引き潮だった。いつもは海の底に隠れている岩肌が露わになって真夏の太陽に灼かれていた。その乾きに先日読んだある文章が重なった。