絵に描いたような夏はいつも足早に過ぎていく。夏休みの終わりとともに浜辺からは人も消えた。茜色に染まる空に秋の寂寥が滲む季節の始まりだ。
「てんしのはしごっていうんだよ」
 テラスで暮れゆく空を見上げていた娘が教えてくれる。