誰もいない浜辺を子どもと歩いていると「無能の人」を思い出す。映画化もされたつげ義春の漫画だ。主人公はかつてはそれなりに名の知れていた漫画家。芸術漫画家というプライドから執筆依頼を断り、貧しい暮らしを強いられている。辿り着いたのが川原で拾った石売り。妻が「父ちゃんは虫けらだ」と言っていることを息子に聞かされるシーンは何度読んでも胸が締め付けられる。