海沿いの道を娘と手を繋いで歩いていく。朝の9時を過ぎていた。通勤通学も一段落したのか、車の往来も少ない。人もほとんど歩いていない。同じように登園を自粛している友達とばったり会えるのではないかと目を光らせている娘の姿に胸が痛む。
「あ!」
  葉を揺らして木から降りて来た小動物に娘が声を上げた。その声に気づいたのか、大きな尻尾をくねらせ、黒い瞳で僕らを見ている。