おはようございます、マクガイヤーです。
時が経つのは早いもので、先日ニコ生をやったと思っていたら、もう明日ニコ生です(本ブロマガは前日に書いております)。
明日の「映画『バンブルビー』公開記念 トランスフォーマー講座は、初の公式放送ということもあり、今からドキドキしております。嗚呼、打ち上げが楽しそう。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○3月20日(水)19時~「映画『バンブルビー』公開記念 トランスフォーマー講座」(いつもと曜日が異なりますのでご注意下さい)
3月22日より映画『バンブルビー』が公開されます。
実写映画版『トランスフォーマー』の7作目にしてスピンオフですが、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』で名を馳せたトラヴィス・ナイトが監督を務め、既に公開された米国ではシリーズ最高傑作と評判も高いです。
そこで、当チャンネルでは映画公開前に、玩具を中心としてトランスフォーマーの魅力を再確認できるような放送を行います。
ゲストとして、前回の放送「トランスフォーマー 上級編」にも出演して頂いたタカラトミーの大西裕弥さん(https://www.instagram.com/yuyaaa0401/)とイラストレーターの中村佑介先生(https://twitter.com/kazekissa)に出演して頂きます。
ちなみに前回の放送「トランスフォーマー 上級編」はこちら
○4月5日(金)19時~「時代はスマブラよりスパロボ! 『スーパーロボット大戦』のひみつ」(いつもと曜日が異なりますのでご注意下さい)
3月20日にPlayStation 4/Nintendo Switch用ゲームソフト『スーパーロボット大戦T』が発売されます。また、年内にはスマートフォン用ゲームアプリで初のシミュレーションゲーム系システムが採用された『スーパーロボット大戦DD』が配信予定です。『スーパーロボット大戦』シリーズの最新作になります。
1991年のGB版『スーパーロボット大戦』発売から28年、シリーズも50作(数え方に諸説あり)を越えた「スパロボ」は、いつの頃からか単なるお祭りや公式二次創作やロボットアニメ回顧コンテンツではなく、「スパロボ」ならではの新しい魅力を産み出すようなムーブメントになってきました。
そこで、シリーズの歴史や魅力を振り返りつつ、「スパロボとはなにか?」に迫るような放送を行ないます。
アシスタント兼ゲストとして、友人の虹野ういろうさん(https://twitter.com/Willow2nd)をお招きする予定です。
○4月21日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2019年4月号」
詳細未定。
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○文学フリマに出店します。
5月6日に東京流通センター第一展示場にて開催される第二十八回文学フリマ東京に出展します。
藤子不二雄Ⓐ作品評論本を売る予定です。
○『やれたかも委員会』に取材協力しました。
『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。
ちなみに基になったお話はこちら
https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063
さて、今回のブロマガですが、ピエール瀧について書かせて下さい。先週からピエール瀧の話を聞かない日は無いのですが、書かずにはいられないですね。
●ピエール滝ゲーム
「ケヴィン・ベーコン・ゲーム」をご存知でしょうか。
ケヴィン・ベーコンはハリウッドでずっと売れ続けている俳優です。若い頃は青春映画のスターとして活躍していましたが、その後個性派・実力派の俳優として脇役で多数の映画に出演しまくり、それが現在までずっと続いています。
だから、共演者がめちゃめちゃ多いのです。
ケヴィン・ベーコンと共演(同じ映画に出演)した俳優に「ケヴィン・ベーコン数:1」を与えるものとします。「1」の人物と共演した人物に「2」を与えます。そして、「2」の人物と共演した人物に「3」を……というふうに、「ケヴィン・ベーコンと映画で共演」という関係性を軸に、人的ネットワークhiいては人間社会を理解していこうという「遊び」がケヴィン・ベーコン・ゲームです。
たとえば、北野武は「ファッキンジャップくらい分かるよバカ野郎」でお馴染みの映画『BROTHER』でTuesday Knightという女優と共演しています。このTuesday Knightさんは『17 セブンティーン』という映画でケヴィン・ベーコンと共演しているので、北野武は「ベーコン数:2」になるわけです。『BROTHER』と『17 セブンティーン』という二本の映画がリンクになっていて、そのリンクの数、すなわち距離が「ベーコン数」になるわけですね。
ベーコン数は「6次の隔たり」――全ての人や物事は6ステップ以内でリンクしている――という仮説を証明する「遊び」の一つとして考案されたのですが、ケヴィン・ベーコンがあまりに多くの映画に出ているので、6次どころか「ベーコン数」3以内にほとんどの俳優が収まってしまうそうです。
ケヴィン・ベーコン数はhttp://oracleofbacon.org/で簡単に測定することが出来るのですが、さて、仮に「新井浩文数」や「ピエール瀧数」をカウントした場合、現在の芸能界で活躍している人気俳優たちはいくつになるでしょうか? また、リンクとなる作品数はいくつくらいになるでしょうか?
●おれとピエール滝
……そんなことを考えてしまうのは、新井浩文が派遣マッサージ店の女性従業員への強制性交の容疑で、ピエール瀧がコカインを摂取による麻薬取締法違反の容疑で逮捕されたからです。二人の出演作がどんどん「封印」されていってるわけですが、あと一人か二人名脇役や個性派と呼ばれる売れっ子役者が逮捕されたら、ここ10~20年くらいの邦画をテレビで放送するのは不可能になるんじゃないの、なんてことを考えてしまうくらいです。
特に、ピエール瀧の逮捕はショックでした。
音楽をほとんど聴かないアラフォーおじさんの自分ですが、高校や大学の頃は筋肉少女帯とスチャダラパーと電気グルーヴを楽しく聴いていた思い出があります。テレ東で放送されていた『モグラネグラ』がとにかく面白くて、ホストであった彼らの音楽も聞くようになったのです。
その後、大槻ケンヂが鬱病になったり、BoseがあやまんJAPANのさくらだと結婚したりしたことにも驚きましたが、瀧がコカイン吸入で逮捕は最大のショックです。ヨーロッパであれだけの観客を集めるテクノ・アーティストがドラッグを一かけらもやってないなどとは思っていませんでしたが、日本で、日常的にやっているとも思っていませんでした。ヨーロッパや北米で大麻を吸うのと、日本でコカインやるのとでは、全く話が違うということを、誰よりも理解していたはずだと思っていたのですが……
まさか、ピエール瀧のことをピエール瀧容疑者……いやさピエール瀧メンバーと呼ぶ日が来ることになるとは思わなかったです。
……そんなことを思ってしまうのは、『モグラネグラ』出演者の中で、お茶の間レベルで最も売れたのは、結局のところピエール瀧メンバーだったからです。
●俳優としてのピエール瀧と「昭和のおっさん」
音楽制作に集中したいという理由から『モグラネグラ』を早々に降板した石野卓球や、そもそも音楽以外の活動に参加しなかった砂原良徳に対し、ピエール瀧はテレビやラジオに出続けます。『ポンキッキーズ』への瀧のレギュラー出演は知名度の向上に繋がりましたが、卓球やまりんがテレビやラジオに出なくなっても瀧だけが出続け、遂にはタレントや俳優業を主たる収入源にするようになったのは、瀧が口にする「現場が好き」という理由以外に、音楽で食っていける卓球やまりんに対し、自分はそれしかできないからという切実な理由があったはずです。特に2001年に電気グルーヴが活動を中止した際は、瀧にとってキャリアのピンチだったはずです。
しかし、その切実さをおくびにも出さず、本人としても心から気にしていないだろうと思える瀧の堂々たる態度は、何千人、時には万単位で集まったオーディエンスを前にパフォーマンスした経験に基づいた「現場」での強さも相まって、様々な監督や演出家にとって魅力的に映ったのでしょう。
初期の俳優活動、『ハッピー・ピープル(1997)』や『木更津キャッツアイ(2002)』への出演は、明らかに専業俳優でない「異物」としてのキャラクターを求められてのことでした。いずれも好演していますが、主役でも脇役でもない「ゲスト」としての出演です。『SF サムライ・フィクション(1998)』や『RED SHADOW 赤影(2001)』は、それまでミュージックビデオの監督として有名だった中野裕之による監督作品ですが、この関係で多くのミュージシャンが俳優として出演し、瀧の出演はその一環としての域を出ません。
転機となったのは、『ローレライ(2005)』と『ALWAYS 三丁目の夕日(2005)』の二本です。
いずれも天下の東宝が予算をかけて製作した大作映画で、現在ではなく近過去としての昭和を舞台としていることが共通していますが、アラフォーになり自他共に認めるおっさんとなった瀧に、どことなくやんちゃでありつつ胡散臭さを残した昭和のキャラクターはぴったりでした。
特に『ローレライ』は、物語の根幹に関わる重要な役どころでした。原作の福井晴敏は主要登場人物の一人として若者を導くメンターとしてのアニキ的なおじさんを用意することが多いのですが、本作ではとある「秘密」を抱えています。若い頃から続けていた野球と中年太りが重なった瀧の体型と昭和顔は、珍しく押し黙った演技も含めて、新境地を開拓するものでした。
『ALWAYS』は、これまでと同じく異物感のあるチョイ役ゲストとしての出演でしたが、作品が大ヒットしたこともあり、以後「ちょっと気のいい昭和のおっさん」にタイプキャストとして瀧があてがわれることが多くなります。
一方で、樋口真嗣は「頼りがいのあるアニキ」的な要素を瀧に見出し、自作ではチョイ役でも必ず瀧を起用し、職業軍人や侍のような『ローレライ』でのそれを引き継いだようなキャラクターをあてがうようになります。白眉は『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN(2015)』二部作で、「部隊長」として主人公たちを導きつつ、話も転がしていく重要なキャラクターを演じています。
●俳優としての転機
ピエール瀧のキャリアを俳優としてみた場合、いくつかの転機があります。
一つは、あまり注目されることはありませんが『百万円と苦虫女(2008)』です。ここで瀧が演じた、女性が苦手で純朴だけどやる時はやる農家の男は、「異物」ではない普通のおっさんを演じられることの証明でもありました。高評価を受けた『そして父になる(2013)』の演技も、この延長線上にあります。
一方で、数々の賞を受賞した『凶悪(2013)』の死刑囚にして元暴力団組長は、この対極にあります。過去パートでのリリー・フランキーとのやんちゃなやりとりは瀧にとって日常のそれだったのでしょうが、現在パートでの死刑囚としての抑えた演技を対比として置き、一本の映画で役者としての様々な顔をみせた瀧は、圧巻の一言でした。受賞したのは「助演」男優賞でしたが、実質的にピエール瀧の主演作といって良いでしょう。
監督の白石和彌は、樋口真嗣とは違う意味で瀧に魅了されたのでしょう。全作品とはいきませんが、自作の多くで瀧に重要な役をあてがうようになります。『日本で一番悪い奴ら(2016)』や『孤狼の血(2018)』の瀧は『凶悪』のそれを引き継いだような役柄で、以降、瀧のタイプキャストに「ヤクザ役」や「(ヤクザのような)警察役」が加わることになります。ゲームですが『JUDGE EYES:死神の遺言(2018)』の瀧の役柄は、完全にタイプキャストとしてのそれです。一方で、『サニー/32』のようなある意味で時代精神を反映しつつ話を引っ張っていくような役柄は、俳優としての瀧の評価を確固たるものにしました。
また、このような俳優としての瀧の変化をチェックした山崎貴が、『ALWAYS』シリーズのそれとは180度異なる完全な悪役として『寄生獣 完結編(2015)』に起用し、これはこれで成功していたことも、きちんと記しておきたいところです。
●個性派俳優ピエール瀧を惜しむ
『アウトレイジ 最終章(2017)』での瀧の起用は、タイプキャストとしてのヤクザ役と、胡散臭いおっさんとしてのコメディ演技を合わせたような役柄で、さすが北野武といえるキャスティングでした。
ゲーム『SIREN2(2006)』での怪演(そもそも『寄生獣 完結編』での瀧の演技はこの延長戦にあります)や、『ココリコミラクルタイプ(2001- 2007)』のミラクルさんを引き継いだような『アナと雪の女王』のオラフ役など、声優としての演技にも定評がある瀧は、俳優としての評価が年々高まっていきました。もっとえいば、ピークを迎えていたといっていいでしょう。
そこにきてコカイン吸入で逮捕です。
取り調べの際に職業を聞かれ、俳優ではなくミュージシャンと名乗ったというエピソードには、様々な意味で涙が出そうになりました。自分も、俳優よりも電気グルーヴの一員としてのピエール瀧が大好きですが、俳優としても、それはそれで好きでした。
今回の騒動で何回も流された資料映像を見る限り、『アウトレイジ 最終章(2017)』とは別の意味でヤクザ演技とコメディ演技を合わせたような『麻雀放浪記2020』が公開中止にならなかったことに胸をなでおろしつつ、ピエール瀧が演じるヤクザを裁判で無罪にする『JUDGE EYES』こと『キムタクが如く』を再度プレイしたいところです。
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平野建太
発 行:合同会社Tetragon
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