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【第257号】映画秘宝の真面目さについて
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【第257号】映画秘宝の真面目さについて

2020-01-29 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第257号 2020/1/29
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    おはようございます。

    昨年、まとまった夏休みをとらなかった代わりに、来月休みをとって旅行に行こうと計画しています。気分はすでにエアポートおじさんです。空港までバスで行っちゃおうかなあ。



    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    ○2月2日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2020年2月号」

    お題

    ・最近のコロナウイルス

    ・ありがとう映画秘宝

    『男はつらいよ お帰り 寅さん』

    『音楽』

    『さよならテレビ』

    『フォードvsフェラーリ』

    『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

    『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』

    『エクストリーム・ジョブ』

    『家族を想うとき』

    『ジョジョ・ラビット』

    『リチャード・ジュエル』

    『戦争は女の顔をしていない』

    その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    ○2月17日(月)19時~「つげ義春とぼくとわたし」(いつもと曜日が異なっております。ご注意下さい)

    つげ義春の新しい全集『つげ義春大全』が2020年4月から講談社より刊行開始されます。これまでの全集に収められていた漫画作品だけでなく、貸本劇画や、文章やイラスト、旅写真なども収められた決定版になり、2021年2月までに全22巻が順次発売されるそうです。

    つげ義春は、作品数の少なさにも関わらず、漫画史において絶対的な影響を残したレジェンド漫画家の一人と言って良いでしょう。しかし(実質的な)引退から20年以上経過したこともあり、世間の話題に上ることが少なくなっていた今、このような全集が発売されることはファンの一人として喜びに堪えません。

    そこで、漫画家つげ義春の解説をしつつ、推しつげ作品について紹介するような放送をしたいと思います。

    ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。



    藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109


    また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。

    https://macgyer.base.shop/items/25929849


    合わせてお楽しみ下さい。



    ○『やれたかも委員会』に取材協力しました。

    『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。

    ちなみに基になったお話はこちら

    https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063





    さて、今回のブロマガですが、『映画秘宝』について書かせて下さい。


    ●おれと映画秘宝

    先週の月曜日、映画秘宝の創刊25周年記念号にして休刊号にあたる2020年3月号が発売されました。版元である洋泉社が宝島社に吸収合併され解散するのに伴う休刊だそうです。大好きな雑誌だったので残念です……の一語では言い表せない思いがあります。

    自分が映画秘宝を定期購読するようになったのはゼロ年代になってからです。「ムックの頃から買っていた」とか「映画宝島の頃から読んでいた」といった人たちに比べれば、遅いですね。映画宝島の『怪獣学・入門!』や『異人たちのハリウッド』はお気に入りで、何回も繰り返し読んでいたのですが、続かなかったのですね。

    告白すると、ムックの頃の映画秘宝は意識的に敬遠していました。20代の頃の自分には、『エド・ウッドとサイテー映画の世界』とか『悪趣味邦画劇場』のタイトルから想像される、悪趣味映画をあえて楽しんでやろう的な雰囲気が受け入れられなかったのです。そりゃトロマ映画もコーマン映画も面白いけど、あえて楽しむもんじゃないだろうと、勝手に思ってました。また、その頃はちょうどVHSからDVDへの移行期で、シネマヴェーラも新文芸坐も無く、石井輝男も鈴木清順も若松孝二も『女囚さそり』『幻の湖』も観る機会に恵まれませんでした。というか、まだおれは何も知らなかったんだなあ。


    そんな自分が何故『映画秘宝』を定期購読するようになったのかというと、これははっきりと覚えているのですが、町山智浩(敬称略)の影響です。

    たまたま聞いたTBSラジオ『ストリーム』の『コラムの花道』が面白かったこと、ブッシュの再選に合わせてネットで大暴れしていたことから興味を持ち、ちょっと読んでみるかと手に取ったら面白く、毎月買うようになったわけです。


    ●映画秘宝の真面目さ
    映画雑誌の役割とはなんでしょうか。まず、世の中に知られていない映画を読者に紹介することでしょう。これには新作紹介だけではなく、時間や歴史の狭間に埋もれてしまった映画も含まれます。また、よく知られている映画の新しい見方や皆が気づかなかった魅力――新たな文脈についての紹介も役割の一つでしょう。

    では、映画秘宝はどうだったのか。

    実際読んでみて驚いたのは、映画秘宝という雑誌の真面目さでした。

    ゾンビ映画やモンド映画や食人族映画といった、メジャーの映画評論の場で馬鹿にされがちだった映画に、新たな文脈を与えることで新たな価値を与える……というのが映画秘宝のやり方だというふうに思っていたのですが、きちんとした取材・ジャンルの歴史解説、過去作や関連作の徹底した紹介などで、文脈にちゃんとした根拠を与えていました。

    ホラー映画、マカロニ西部劇、カンフー映画、東映実録映画……といったジャンル映画を紹介する際には、必ずジャンルの祖となった作品から最新作まで、更にはキーマンとなるクリエイターを紹介していました。この姿勢はアメコミ映画も原作コミックやそのクリエイターから紹介するという形で、休刊まで続くことになります。

    また、韓国映画やインド映画だけでなく、タイ映画やインドネシア映画、インディーズ映画やドキュメンタリーといった、そのままでは埋もれてしまいがちな各国の映画を発掘し、紹介していました。こちらも、ネトフリやAmazonプライムでひっそりと配信されている面白い作品をねちっこく紹介するという形で、休刊まで続くことになりました。


    特に、ゼロ年代後半からの映画秘宝は、ムック時代にあったよくいえばやんちゃな、悪くいえば下世話だけな幼稚さが無くなってきたように感じられました。

    『ホテル・ルワンダ』『ヒルズ・ハブ・アイズ』といったなかなか日本で公開されない映画をいち早く紹介して劇場公開の機運を高めつつ、『靖国 YASUKUNI』『ザ・コーヴ』についてきっちりと特集を組むところなど、実は映画秘宝って真面目な雑誌なのではないかと思い始めたのがこの頃です。

    他の映画雑誌が絶対に扱わなかった渡辺文樹やブレイク前の園子温を紹介しつつ、90年代映画秘宝のイメージから遠かった中島哲也や井筒和幸、北野武の新作もきっちり紹介し、評価し、特集するようになってきました。完全に映画秘宝に影響されて、渡辺文樹の上映会や名画座に通うようになったのもこの頃です。


    これは勝手な憶測ですが、町山智浩がパイ投げ事件の責任をとってアメリカに行かなければ、映画秘宝のこのような「真面目化」は無かったのではないかと思います。町山智浩が後に『映画の見方がわかる本』としてまとまることとなる「Yesterday Oncemore」という真っ当な(しかし当時は誰も書こうとしなかった)映画評論を連載していたこと、町山智浩と映画の趣味は被りつつも、映画評論のアティチュードは相反したり全く異なっていたりする柳下毅一郎や高橋ヨシキが連載を持ちつつ雑誌を牽引していたこと、青井邦夫・石熊勝巳・磯田勉・大久保義信・岡本敦史・神武団四郎・添野知生・てらさわホーク・長谷川町蔵・モルモット吉田……といったそれぞれの得意・専門ジャンルを持つライター達がその時々に応じてきっちりと真面目な原稿を書いていたことが、映画秘宝を映画観客にとっての真面目な雑誌にしていたような気がします。特にテン年代後半は、映画秘宝の別冊ムックや洋泉社からの単著という形で、各ライターが専門性を存分に活かした本を発表することが増えました。

    2012年に公開された『桐島、部活やめるってよ』の映画版で、神木隆之介演じる主人公がボンクラ映画マブダチの前野朋哉と「今月の秘宝なかなか頑張ってるよ」と嬉しそうに語り合うシーンがありましたが、実際頑張りを感じらていたのです。更に、大根仁はまだしも、映画秘宝的なイデオロギーとは明らかに対立する山崎貴や堤幸彦のインタビューが映画秘宝に載るようにもなりました。堤幸彦の『SPEC』が表紙になり、福田雄一映画も紹介する姿勢は天晴です。

    遂には、パイ投げ事件以降対立していた(と勝手に思っていた)『キネマ旬報』とライターがかなり被るようにもなってきました。印象的だったのは『ホドロフスキーのDUNE』公開時で、柳下毅一郎や添野知生がいかにも映画秘宝で書きそうな記事をキネマ旬報で書いていたのには驚きました。年々、キネマ旬報の年間ベストテンが映画秘宝のそれに近づいてきていますが、単純にライターが被るようになってきたからという気がします。


    ●映画秘宝MEGA MAX

    というわけで、特に最近は昔にも増して映画秘宝が楽しみになってきただけに、休刊が残念でなりません。休刊号では各配給会社が出す広告に映画秘宝へのメッセージが記されていたり、多数の書店で映画秘宝フェアを開催していたりと、愛されていた雑誌なのだなあと今更ながらに実感します。


    「『映画秘宝』は、日本一売れている映画雑誌のまま、休刊いたします。」は休刊にあたって現編集長 岩田和明が出したコメントというか告知ですが、

    ↑で町山智浩が語っているように、どんな時も雑誌として黒字で、原稿を書いてくれたライターにまとまったおカネを払うというのは、創刊時から現在まで続く雑誌としての哲学やイデオロギーだったのでしょう。


    であるならば、洋泉社を吸収した宝島社が映画秘宝の発行を引き継がず、休刊となるのは、経済的な問題はなくイデオロギーの問題であるような気がします。ネトウヨ向けヘイト本で儲け、ヘイト出版に経済的に依存するようになってきた宝島社が、映画秘宝の「おれたちの好きな映画の好きな話題」というイデオロギー――これにはネトウヨのヘイトを嘲笑するイデオロギーが内包されます――が目障りになってきた故の吸収合併と休刊のように感じてしまうのは、自分だけではないでしょう。


    『宇宙船』がホビージャパンから復刊したように、『ゲーメスト』が『アルカディア』として復刊したように、どこかの出版社から「映画秘宝MEGA MAX』として復刊することを祈っております。キネマ旬報社が「映画秘宝/スーパーコンボ」を出してもええんやで。



    番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。

    マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html

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    新製品乳首ポケストップ Tシャツ

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    同じく新製品スーサイド・スクワッド Tシャツ

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    思わずエナジードリンクが呑みたくなるヒロポンマグカップ

     

    ……等々、絶賛発売中!



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