おはようございます。
一昨日の放送「いまだから知りたいPCRの過去・現在・未来」は如何だったでしょうか?
まさかPCRをテーマにニコ生をやれるとは思わなかったのですが、この機に乗じて喋りたいことを喋れて満足しております。
専門用語だらけの話を分かり易くしてくれたしまさんにも感謝しております。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○6月8日(月)19時~「分断の時代のウォッチメン」
HBO製作のドラマ版『ウォッチメン』がスターチャンネルで配信されています。また、6/3にはブルーレイやDVDが発売され、ワーナーのサイトではデジタル先行配信もされています。
このドラマ版『ウォッチメン』、アメコミの『ウォッチメン』を原作としつつもザック・スナイダーが監督した映画版『ウォッチメン』のようにそのままの映像化ではなく、34年後(つまり「いま」)の架空世界を舞台にした続編のようなドラマとなっています。映画版『ウォッチメン』公開時にアラン・ムーアが「いま映画化するなら冷戦にこだわらず現代を舞台とすべきだ」みたいなことをいっていましたが、それへのアンサー・ソングのようにも思えます。今回もアラン・ムーアは原作クレジットを拒否していますが、はっきりいって面白いです。
そこで、原作コミック、映画、『ビフォア・ウォッチメン』や『ドゥームズデイ・クロック』などの関連作に触れつつ、ドラマ版『ウォッチメン』を特集する放送を行ないます。
ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)をお迎えする予定です。
○6月26日(金)20時半頃~金ロー『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』生実況
コロナウイルスの影響か、名作洋画を放送している最近の金曜ロードショー、この度『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが三作連続で放送されることになりました。自分のようなアラフォーにとっては思い出たっぷりの作品です。
そこで、『PART3』の生実況放送を行います。
コロナウイルスでおうちに籠もりがちなみんな、テレビの前でぼくらと(心の中で)握手!
○6月29日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2020年6月号」
詳細未定。
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、今回のブロマガですが、ニコ生に引き続いてPCRについて書かせて下さい。
●キャリー・マリスは死ぬのが数年早すぎた
ニコ生でお伝えした通り、PCRを発明したのはキャリー・マリスですが、映画の中に出てくる科学者のような科学者でした。
・生化学の博士課程中に宇宙論の論文を書く(しかもNatureに載る)
・博士号取得後にパン屋を2年間経営(明らかにドロップアウトしてる)
・(自分で合成した)LSDの使用を公言
・宇宙人に誘拐されたことを公言
・ドライブデート中にPCRの原理を思いつく
・サーフィン中にノーベル賞受賞の連絡を受ける
・3回離婚し4回結婚する
……と、数々の「伝説」を残しています。
これらのほとんどについては自伝『マリス博士の奇想天外な人生』に記されていて、「私のLSD体験」や「私の超常体験」といった章題にはうめいてしまいます。翻訳を務めているのは『生物と無生物のあいだ』でブレイク前の福岡伸一で、巻末には福岡によるインタビューまであるのもポイントです。
TEDトークも幾つかやっているのですが、どれもドヤ顔でとんでもないことを語っていてちょう面白いです。
そんなキャリー・マリスは昨年の8月に亡くなりました。
もしキャリー・マリスが生きていたら、現在の新型コロナウイルス騒動に対してどのようなコメントを出したでしょうか? なにしろ、テレビや新聞では史上かってないほど「PCR」という言葉が躍っているのです。キャリー・マリスはコッホの原則を満たしていないことからAIDSの原因がHIVであることを否定する頑迷な面がありましたが、COVID-19について同じようなことは言わないでしょう。むしろ、おれが作ったPCRが人類を救う一助になれて光栄だ的なコメントをドヤ顔で出しそうです。
●自動化を制するものはPCRを制す、PCRを制するものは分子生物学を制す
目的のDNAを10の20~30乗倍に増幅するPCRですが、PCRが画期的だった理由を挙げると下記のようになると思います。
1、生体内でのDNAの複製(半保存的複製)を試験管内で模倣したこと
2、一つ一つの反応は単純だが、積み重なることで大きなものを得られること
3、反応系をサーマルサイクラーにセットしたら放置できること
1、は誰もは考えることですが、そのまま試験管内で再現するためには様々な試薬や酵素が必要であるところを、温度変化を組み合わせることでシンプルなものにした点が「発明」です。
2、ですが、ジョージア工科大学卒noキャリー・マリスにはプログラミングの心得があって、単純なルーチンでもそれを繰り返し行うことで大きな仕事が可能になるという感覚が分かっていたことが発想の根底の一つとしてあったそうです。
3、ですが、『マリス博士の奇想天外な人生』で、マリスはこう書いています。
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むろん、誰でも同じ操作を繰り返し繰り返し行うことは面倒くさい。それは私が一番そう思う。もし同じ計算を二度しなければならないのなら、私なら迷わずプログラムを一つ書く労力を選ぶ。しかし、繰り返しが面倒くさいからといって、それが不可能ということにはならない。繰り返すことはやろうと思えば可能であり、自動化することだってできるはずだ。
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PCRの歴史は自動化の歴史といっても過言ではありません。
最初期のPCRはDNAの伸長反応に大腸菌から得たklenow fragmentを使っており、直後の96~98℃で行うdenatureで失活するので、1サイクルごとにピペットでPCRチューブに添加する必要がありました。サーマルサイクラーもまだ存在していなかったので、3種類のウォーターバスにチューブを差し入れていました。
好熱菌から得た熱耐性ポリメラーゼと、自動で温度が変化するサーマルサイクラーの開発が無ければ、PCRはここまで普及しなかったでしょう。反応系を調整した後、チューブをサーマルサイクラーに差し込めば、後はお茶でも飲んでいればDNAが増幅されるのですから。
●PCRセンターは8億円とちょっとで作れる
そう考えると、自動化された韓国のPCRセンターはPCR発明の精神をきちんと受け継いでいるものの一つといって良いでしょう。
https://news.tbs.co.jp/newsi_sp/seikatsu-bousai/archive/20200512_02.html
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