渡部富哉さんの本稿筆者へのメールや「ちきゅう座」での薦めで、孫崎享氏の近著『日米開戦へのスパイ―東條英機とゾルゲ事件―』(祥伝社、2017)を読んだ。

[スリリングな好著] 本書は、まるでサスペンス映画を観ているような気持ちになる、スリリングな本である。そのような感想をいだきながら、読み進めるにつれて、残るページが少なくなってくるのが「惜しいなぁ」と思いつつ、一気に読んだ。

  本書の内容をあまり詳しく紹介すると、読者の楽しみを奪うことになると恐れる。ここでは、評者が本書に読み取った要点と若干のコメントを記す。拙稿をきっかけにして、本書を多くの方々に読んでいただきたいと思う。

  孫崎氏は、本書で以下のような諸点を明確に史実でもって指摘し、従来の「ゾルゲ・尾崎事件」についてのイメージを一新する。

[() ソ連東軍の西部戦線移動はジューコフ元帥の進言による] これまでの理解で