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書評:宮本輝著『三千枚の金貨』
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書評:宮本輝著『三千枚の金貨』

2013-03-19 08:05

     

    宮本輝氏の作品の多くは人生を肯定的にとらえている人々を描く。読み終わってほっとする。それがこの作家の強みである。今回も、同じである。

    小説でも映画でも作品の素晴らしさは主題の展開だけでなく、周辺をどこまで丁寧に描いているかに左右されることが多い。

     この作品の主たるテーマは「新進文具メーカー役員の主人公が、五年前に入院したとき、末期ガンの患者から不思議な話を聞かされた。和歌山県の山にある桜の巨樹。その根元に三千枚の金貨を埋めたという。“みつけたら、あんたにあげるよ”と言われた言葉の真偽を捜す」という推理である。

     推理小説としてみれば、特段、あっとおどろくようなものではない。

     しかし、周辺を実に丁寧に描いている。

     主人公が天山山脈からパキスタンに抜ける旅を描いている。カラコルム・ハイウエーが出てくる。この旅の記述はこの小説に絶対不可欠な要素ではない。

     ただ、著者宮本輝は多分

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