読売「トランプ政権、インド関税「50%」に引き上げ3か月…経済好調のインド譲らず「膠着」
トランプ米政権がインドに対する関税率を50%に引き上げて3か月が過ぎた。米政権は関税引き下げの条件として、ウクライナ侵略を続けるロシアからの原油購入の停止を求めている。インドは国内経済が好調なため譲歩しない構えで、12月上旬にはプーチン露大統領の訪印も予定されており、米印交渉の 膠着状態が続く可能性がある。
 米政権は今年4月、「相互関税」の一律分としてインドに10%を課税し、8月に関税率を計50%に引き上げた。インドが原油購入を通じ、ロシアの戦時経済を支えていることへの対抗措置で、米国産の農産物や工業製品などの輸入拡大も迫っている。
 インドは、米国に繊維やエビ、宝飾品などを輸出しており、最大の輸出相手国だ。追加関税で9~10月の対米輸出額は前年から10%前後減少したが、インドの危機感は薄い。
 政府が11月28日発表した2025年7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比8・2%増となり、伸び率は4~6月期(7・8%)を上回った。物価高が落ち着き、GDPの約6割を占める個人消費が7・9%増と好調だったためだ。輸出も関税引き上げ前の駆け込み需要で5・6%増となり、モディ印首相は28日、X(旧ツイッター)に「成長率に元気づけられる」と投稿した。
露大統領招待へ
 ただ米関税の国内経済への影響は今後表面化する恐れがあり、インド政府は9月、日本の消費税にあたる「物品・サービス税」について、食料品などの税率を大幅に引き下げた。効果は早くも表れ、10月の乗用車と二輪車の新車販売台数は過去最高を記録した。 インドは「米印両国は貿易と商業の拡大に尽力している」(ゴヤル商工相)と交渉継続を強調するが、妥結を急ぐ様子はない。
 インド商工省によると、24年の原油輸入額(約23兆円)の うち、ロシア産は最多の35%で、ウクライナ侵略前の21年(2%)から大幅に拡大した。ロシア産の安い原油の 輸入は、国内の物価抑制につながっており、米国が求める購入停止を受け入れるのは 難しい。
 モディ氏はプーチン氏をインドに招き、12月4~5日に首脳会談を行う予定だ。2国間関係の強化を確認するとみられている。米政権が反発する可能性が高く、関税を巡る米印の交渉は着地点が見えない状況だ。
A-2ロイター:インド国内経済の堅調さが、米国との貿易協定交渉の余地をインドに与えていると関係者らは述べている。
概要
・米国関税による輸出への限定的な打撃が、交渉の圧力を緩和
米国向け輸出は10月に前年同月比8.6%9月は12%減だった。
・輸出企業は多角化と値下げで損失を相殺
インド、安価な中国製品との競争激化に直面
インドの国内経済が好調で、輸出への打撃が予想より小さかったことから、インドは米国との貿易協定交渉の余地が広がっている。米国はインドからの輸入品に最大50%の関税を課している。インドの関係筋やアナリストらによると、インドの対米輸出は10月に前年同月比8.6%減の63億ドルとなった。これは、インドからの輸入品に50%の関税が課されてから2ヶ月目となる。