秋分の日は、春分の日と同じように、太陽が真東から昇って真西へ沈み、昼と夜の長さがほぼ同じになります。また、この日を境にだんだんと夜の時間が長くなり、いよいよ残暑も終わりを迎えて、過ごしやすい気候になります。そして、毎年この時季になるとよく耳にするのが「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉。テレビやラジオなどで、気象予報士やお天気キャスターが口にしているのを聞いたことはありませんか?
この「彼岸(ひがん)」とは、秋分の日を中日(真ん中)にして、前後3日間を合わせた7日間のこと。また、仏教では、生死の海を渡って到達する悟りの世界をさします。つまり亡くなった先祖がいるあの世のことです。
一方、私たちが住んでいる煩悩に満ちたこの世は、「此岸(しがん)」といいます。彼岸は西方に、此岸は東方にあるとされ、太陽が真東から昇って真西へ沈む秋分の日は、あの世とこの世がもっとも近づく日。そのため、お墓参りに行くのが習わしです。ちなみに、国民の祝日に関する法律では、秋分の日を「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」と定めています。
とはいえ、仕事で忙しかったり、実家が遠方だったりして、お墓参りに行かれない人のほうが圧倒的に多いと思います。その場合は、真西に沈む太陽を眺めましょう。できればきちんと両手を合わせて。そうやって夕陽を拝むことは、西にある彼岸(極楽浄土)に向かって拝むことになるからです。そのとき、良縁や子宝に恵まれるようにと祈れば、子孫の繁栄や幸せを願うご先祖様が、あなたの思いを聞き届けてくれるはず......!
一年の折り返し点で自分と向き合ってみるところで、およそ365日をかけて太陽のまわりを1周する地球は、たえまなく動きつづけているので、スタートもゴールもありません。それを天文学では、春分になる瞬間を起点(スタート)としています。つまり秋分とは、地球が太陽のまわりをちょうど半周したところ。いわば、折り返し点であり、ターニングポントです。
日々の暮らしの中で、夕陽をじっと眺める、なんてことは滅多にしないと思います。だんだんと沈んでいく夕陽を眺める時間は、自分と向き合うための大切な時間。年にたった一度しかない秋分の日の夕暮れ時、自分のルーツに思いを馳せながら、自分自身と向き合えば、転機とよべるようなきっかけをつかめるかもしれません。
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