女性ホルモン。いまや知らない人はいないくらいメジャーになりましたが、15年前は「ホルモン? ホルモン焼きのこと?」と焼き肉屋をイメージする人がたくさんいました。実は女性ホルモンの本を一般女性向けに書いたの(15年前)は、たぶん私が最初だったのでは、と思います。
女性ホルモンと言えば、女性の体、心、肌をコントロールすることで知られていますが、もっと、女性ホルモンの働きと私たち女性の体との関係を詳しく知って整えていけば、「素肌美人になりたい!」「スタイルアップしたい!」「不調をなんとかしたい!」「キレイだねって言われたい!」「いつもでも若く見られたい!」という多くの女性が願う希望に近づけます。
女性ホルモンは、どこから分泌されているか知っていますか? まさか「子宮です!」と答えている人はいませんね。女性ホルモンは"卵巣"から分泌されているのです。卵巣から出ている女性ホルモンには、2種類あります。ひとつは"エストロゲン(卵胞ホルモン)"もうひとつは"プロゲステロン(黄体ホルモン)"というホルモンです。このふたつの女性ホルモンは、妊娠、出産の準備のためにはもちろんのこと、全身をめぐって毎月の生理や体調に大きく影響しています。
生理痛、生理不順、頭痛、肩こり、疲れ、冷え、むくみなどの体の不調、イライラ、落ち込み、不眠、うつっぽいなどの心の不調も、女性ホルモンが影響しています。吹き出物、肌荒れ、乾燥といった肌の不調も、女性ホルモンの影響であることが少なくありません。それとは逆に、肌や髪にうるおいや艶を与えたり、体調がよく活動的になって頭が冴え、幸福感に満たされてポジティブに物事を考えられるのも、女性ホルモンが影響しています。
どうして、この相対するような出来事が、体の中で起こるのでしょうか?
女性ホルモンは、ふたつあるとお話ししましたが、このエストロゲンとプロゲステロンが、それぞれ異なる働きをしていることが、その理由です。
エストロゲンは、女性らしさをつくるホルモン。女性らしい体つきをつくり、卵胞(卵子の元)を育て、子宮内膜を厚くしたりします。自律神経、感情の働き、皮膚、粘膜、骨、関節、筋肉、内臓、脳の働きにも、大きくかかわっています。一方、プロゲステロンは、妊娠を助けるホルモン。子宮内膜を妊娠しやすく整え、妊娠しなければ子宮内をお掃除します。一般的には、エストロゲンとプロゲステロンは真逆の働きをしているホルモンなのです。
このエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は、ひと月の中で大きく変化しています。この女性ホルモンのリズムから、ひと月を「生理の時期」「卵胞期」「排卵期」「黄体期」と4つに分けています。「生理の時期」はエストロゲン、プロゲステロンともに分泌が少なくなります。しかし、生理が終わるころから排卵までの「卵胞期」には、エストロゲンの分泌が最高量に。その次は「排卵期」で、卵巣から卵子が飛び出す時期。そのあとにやってくるのが「黄体期」。プロゲステロンが多く分泌される生理前のPMS(月経前症候群)の時期です。
エストロゲンの分泌が多い「卵胞期」から「排卵期」までは、ひと月のうちで体も心も絶好調、お肌もキレイです。
このことを知っていれば、この時期に仕事でもプライベートでも大事な予定を入れると、体調がいいのでなかなかうまくいきます。デートをするのもこの時期がおすすめ。エストロゲンは、これから受精を目ざすので、いわゆる"攻め"のホルモン。恋が成就するかも!?しれません。
しかし、誤解してはいけないのは、女性ホルモンを単純にアップすればいいわけではないことです。エストロゲンを増やせば、体も心もお肌もいつも調子がいいということにはなりません。エストロゲンを増やし過ぎれば、乳がん、子宮体がん、卵巣がんなどのリスクも上がります。あくまでもバランスが大事。多すぎても少なすぎてもダメ。バランスが崩れると、さまざまな不調が起こります。ふたつの女性ホルモンがバランスよく、ひと月のリズムにあわせて分泌されていることが大切なのです。
次回は、女性ホルモンのバランスが崩れたときの対処法。そして、もうひとつの女性ホルモン、プロゲステロンの分泌が多くなることによる不調の解決策を紹介します。
増田美加(ますだ・みか)さん
女性医療ジャーナリスト。
2000名以上の医師を取材。予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/