専門家の指導と管理の結果、抗うつ薬のような効果も
image via Shutterstock米国の精神医学の雑誌で発表されたのですが、世界の66の研究を分析した結果です。うつ病と気分についてさまざまな基準から症状の改善を調べたものや、症状が軽くなった人の割合を調べたものを調べたのです。
1日3時間睡眠(20〜21時間は起きていて、残りの3〜4時間で眠る)の人と、まったく眠らない人(36時間連続して目がさめている)のうつの症状が、同じくらい軽くなったと判明。薬物療法でうつ病を治そうとすると、症状の改善までにかなりの時間がかかるのですが、あえて睡眠不足になるというアプローチによりわずか1日でそれと同じくらいの効果がかなえられました。
もっとも、ブルーな気分だといってやみくもに眠らないのは安易。研究は、きちんと管理されたなかで、入院したうえで行われたもの。無理に目を閉じないでいるとうつ病の症状はかえって悪化することも考えられます。不眠症の人については、正常に眠れる人より不安症とうつ病の両方になりやすくなるという研究もあります。
「睡眠時間を削るのは、自分だけでやるようなものでなく、専門家の指導と管理のもとで行うもので、魔法の治療でもありません。確かに睡眠不足の状態になると抗うつ薬のような効果がすぐに現れましたが、半分の人では効果は続かなかったのです」とペンシルベニア大学のエレイン・ボーランドさん。
一部の人では効果的
image via Shutterstockネバダ大学のダスティン・ハインズさんも、睡眠不足を起こす治療が、だれにとっても理想的であるわけではないという意見。ただし、一般的な薬よりも、一部の患者さんにはよい効果がありそうだとも見ています。薬では何週間もかかるのに、睡眠不足を引き起こすと効果が速やかに出てきたのですから。その点はこの研究のポジティブなところ。速くて、効果的。さらに副作用があっても、睡眠を元に戻せばよいのです」
うすうす知られていた 考え方
うつ病の治療に対する睡眠不足の効果は何も新しい考え方ではなく、過去30年間の研究成果をデータ分析したものです。うすうすその奇妙な治療は可能性があると気づかれていたのです。でもなぜ効いていて、診療でどう位置づけるのかという判断根拠はありませんでした。
「うつ病のときに睡眠不足になると脳でどんなことが起きているかわかれば、同じような反応を起こす治療も有望と考えられます。うまくいけばその反応を強くする方法まで見つかるかもしれません」とボーランドさんは言います。
なぜ効くのか、追加調査が必要
いったい何が今回のような効果を引き出したのか。抗うつ薬よりも効いて、多かれ少なかれうつ病の人に効果が出たのです。
抗うつ薬と同じように、睡眠不足になれば副作用も要注意。物事を判断したり、反応したりしにくくなります。眠いとジャンクフードに手を伸ばしやすくなることもわかっています。「うつ病の人に、症状を軽くするために夜起きていて、と言ったりするようなことはしません。さらに医師や精神医療の関係者で追加の調査をするのが一番です」とボーランドさんは考えています。
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