情報過多な現代において、「必要最低限の知識と、簡単かつ正しいお手入れ法を知っておくだけで、ちゃんと美肌は作れる」 ーーそう説くのは、美容皮膚科医・髙瀬聡子先生。
皮膚医学に基づいたウワサの真相と美容にまつわるお役立ち情報について、美容皮膚科・ウォブクリニックの院長 髙瀬さんの新刊『ゆる美容事典』(講談社)から紹介します。
がんばりすぎは逆効果。美肌の近道は「ゆる美容」にある
スキンケア化粧品の研究開発に携わり、2007年に美容皮膚科・ウォブクリニックを開院した髙瀬聡子先生。美容医療のスペシャリストとして信頼が厚く、雑誌やテレビでの活躍でも知られています。
髙瀬先生が勧める「ゆる美容」とは、100%全力投球ではなく70%くらいの力でゆるく続けること。
興味本位に流行をあれこれ盛り込んで毎日30分スキンケアをがんばるよりも、必要なお手入れを選んで1日数分続けることが美肌をキープできる可能性が高いと言います。
食事、睡眠、生活、そしてスキンケア。バランスよく美肌を手に入れるカギは「知識」にあるのだとか。
「正しい知識をもつことが、ラクして美肌を手に入れる最大のコツとなります」
(『ゆる美容事典』184ページより引用)
『ゆる美容事典』の執筆にあたり、世の中に根拠のない美容のウワサがこんなにたくさんあるんだ!と驚いたという髙瀬先生が、美容にまつわる都市伝説の答えを教えてくれました。
ウワサ1. 毛って剃ると濃くなる? 太くなる?
「濃くも太くもなりません。全身の毛根の数は生まれる前から決まっていて、増えることはありません。剃ると毛の質が変わるというのも考えにくいでしょう」
(『ゆる美容事典』28ページより引用)
では、なぜこのウワサが広まったのかというと、本来は先細りしている毛をカミソリで剃ることで断面ができ、太く黒々と見えることがあるから。気になる場合は、剃毛よりも脱毛がおすすめです。
ウワサ2. 「肌の曲がり角は25歳」って本当?
だいたい18歳をピークに肌は下り坂に入ります、と髙瀬先生。人の成長期は18歳くらいで終了し、それ以降は後退するのみ。成長期が終わると徐々に肌本来の力が衰え、乾燥やくすみ、シミ、シワなど老化が進行していくのだそう。気がつくのが25歳くらいという人が多いのかもしれません。
そこで美肌のカギとなるのが、肌が自ら新陳代謝できる能力「ターンオーバー」を味方につけること。つまり、ターンオーバーが好調なら肌はずっときれいでいられるのです。
「細胞が生まれてからはがれるまでのサイクルは、約28日間が理想です。
それより遅くなれば乾燥やくすみ、エイジングの原因となり、逆に早くても、細胞が未熟なまま育って肌のバリア機能が低下します」
(『ゆる美容事典』38ページより引用)
理想的な28日周期は20代前後の場合で、30代では40日、40代では45日程度と、加齢とともに少しずつ遅くなっていきます。
このような加齢による代謝の遅れには、不要になった表面の古い角質を取り去り、新しい細胞の成熟を促せる角質ケアが効果的。
酸が入ったマイルドな美容液や、たんぱく質を分解する酵素が配合された洗顔料など、肌をはがしすぎないマイルドなものを使い続けましょう。
ウワサ3. 肌断食すると美肌になれる?
一切のスキンケアをやめる肌断食は、百害あって一利なし。「スキンケアで肌が甘やかされてダメになっているので、やめると機能が向上する」というのは、ありがちな美容の勘違いなのです。
「そもそも「肌が甘やかされる」という考え方は皮膚医学にありません。今使っている化粧品が合っているなら、やめる必要はなし!」
(『ゆる美容事典』58ページより引用)
むしろ、洗顔後になにもつけないと肌が乾燥してバリア機能が低下し、トラブルのもとに。ただし、油分を塗るときは注意が必要です。皮脂が出ているのにクリームなどで油分を与えすぎていると、長期的に皮脂腺の働きが弱まることも。
ウワサ4.オーガニックやナチュラルコスメは肌にやさしい?
自然なものは人にやさしいというイメージがあるけれど、肌にとってはそうではないと髙瀬先生は言います。
オーガニックコスメは有機栽培された植物を使用したもの、ナチュラルコスメは自然派コスメのことを指し、「肌にやさしい」「肌にいい」という意味ではありません。
「自然のままの成分はさまざまな微量成分を含んでいるので、人によってはトラブルの原因に。不安定で変質しやすい場合もあります」
(『ゆる美容事典』101ページより引用)
肌に合えばパワフルな植物の力を感じられるけれど、やさしいお手入れをしたいなら科学の力で安定化された化粧品を使うことがおすすめ。
また、世界にはUSDA(アメリカ)やECOCERT(フランス)のようにオーガニック認証機関があるものの日本にはなく、配合率や製法は各メーカーに任されているのが現状です。そのため、選ぶための知識や判断力が重要となります。
ウワサ5. 胃が悪いとあごにニキビができるって本当?
あごのニキビは主に、胃よりストレスや睡眠不足によってホルモンバランスが乱れることが関係しています。男性ホルモンの影響が出やすいあごやフェイスラインにニキビができるのは、女性に多い症状なのだそう。
このように、若い頃とは違い皮脂が多いわけではないのにできる大人ニキビ。その原因はさまざまで複雑に絡み合っていることも多く、ストレスのほかに乾燥、洗いすぎ、食生活の乱れ、ビタミンB2、B6不足が考えられます。
「食べ物でニキビに悪影響なのは、皮脂の分泌を促す刺激物を過剰にとること。チョコレートのカカオは刺激物にあたりますが、食べすぎなければ問題ありません。他に、コーヒーに含まれるカフェイン、辛いもの、ナッツなど脂の多いもの、白砂糖も要注意です」
(『ゆる美容事典』130ページより引用)
一方、ニキビにいい食べ物は緑黄色野菜やビタミンCがとれるフルーツ、納豆、レバー、うなぎなど。積極的に取り入れたいところです。
ウワサ6. 白髪は抜くと増える?
よく耳にする都市伝説のひとつですが、白髪は抜いたからといって増えることはありません。白髪ができる原因は老化や極度のストレスといった突然変異、遺伝などです。
「ただ、抜けばなくなる、ということもなく、しばらく経って同じ場所からまた髪が生えてきたとき、その髪は白髪です。抜くと毛根のダメージは避けられないので、気になる場合はハサミで根元からカットするのがベターです」
(『ゆる美容事典』165ページより引用)
また、地肌や髪には直射日光が当たるので影響を受けやすく、直接の原因としては明らかになっていないものの紫外線ダメージの蓄積が一因であることも考えられるそう。
知っているようで知らないことが多く、正しい知識を身につけることの重要性を感じました。できることから少しずつゆる美容に取り組み、バランスよくカラダ磨きをしていきたいですね。
髙瀬聡子(たかせ・あきこ)さん
皮膚科・美容皮膚科医。ウォブクリニック中目黒総院長。1995年に慈恵会医科大学卒業後、同大に皮膚科医として勤務。2003年にスキンケア化粧品「アンプルール」の研究開発に携わり、2007年にウォブクリニックを開設する。雑誌やテレビ出演も多数あり、著書に『いちばんわかるスキンケアの教科書』(講談社)、『気になるパーツのスキンケア2週間速攻メソッド』(宝島社)など。
『ゆる美容事典』(講談社刊)
きれいにはなりたいけど、面倒なことはニガテ。毎日時間をかけたケアなんてムリ~~。そんな美容偏差値低め女子でも大丈夫!な必要最低限の知識と、簡単かつ正しいお手入れ法がわかる髙瀬聡子さんの新刊『ゆる美容事典』。今回の記事に出てきたような、美容のさまざまなウワサやギモンがすっきり解決する1冊です。
文/鈴木 希