問題なのは、体調不良や気力の低下。マイナス感情が増えてきたかも……などと感じたら、五月病を疑いましょう。
悪化と回復の分かれ道
ブルーマンデーという言葉があります。日曜日の夜あたりから憂鬱な気分になり、月曜日が来ることにストレスを感じる状態のこと。こういう感情は、誰もが感じるものだと奥田先生はいいます。
「誰だって、朝寝坊したり、好きなことをして過ごしたいですよね。10連休も楽しく過ごした後ですから、日常に戻るのが嫌だと感じるのは、おかしなことではありません。その程度のストレスは、皆が感じるものです。
では、それが悪化して五月病になる人とならない人は何が違うかというと、前回もお伝えしましたが、心身の疲れがしっかりケアできているかどうかがポイントになります。連休明け、気分が落ち込んだまま回復しない、いつもは我慢できることに激しくイライラしたり流涙してしまう、倦怠感がひどく集中力が続かないという人は、五月病を疑いましょう。
そのまま放置して悪化すると、うつ病を引き起こしたりします」(奥田先生)
どんな人が五月病になりやすいの?
できれば五月病になどならず、連休明けから元気に過ごしたいですね。どんな人は要注意なのでしょうか。
責任感がある/頑張りすぎる 完璧主義 自分の気持ちを抑圧しすぎる 周りの空気を読み過ぎる 相手の都合にばかり合わせてしまう 休みの日にしっかり休息をとらずに出かけてばかりいる 自宅にいてもSNSやスマフォで他者とコミュニケーションばかりしている「まず、頑張りすぎる人は、睡眠時間を少なくしても頑張る傾向にあります。睡眠時間は最低6時間確保が基本。そして完璧主義の人や自分の気持ちを抑圧しすぎる人はストレスをためやすい傾向に。
相手も自分も、多少ゆるくてOKという気持ちをもつようにしましょう。相手の要求をひとつ聞いたら自分の要求もひとつ聞いてもらう、波風立てないように我慢するのは辞める、自分に負荷をかけすぎないなど、ストレスをためない工夫をしましょう。
休日は、レスト(休養)をしっかりしたうえで他者との付き合いや遊びをほどよく楽しむことを意識してほしいですね」
環境ストレスのない5月は絶好の回復期!
寒い、暑いという過度な気温は「環境ストレス」といい、人体にストレスを与えます。5月という季節自体は、この環境ストレスが一年を通しても少ない時期なので、比較的スムーズに疲労が回復できる、と奥田先生はいいます。
「連休に遊びすぎてしまった、しっかり休養ができなかったという人は、土日などを利用して3つのRで回復を目指しましょう。食事の見直しも、回復に役立ちます。疲労回復物質を多く含むタンパク質をしっかり摂ることが大切。タンパク質というと、油が多くカロリーが高いというイメージをもっている人も多いようですが、調理法や選ぶメニューによってヘルシーに食べられます。
たとえば、刺身や鶏のむね肉、赤身肉などは高たんぱく低カロリーのおすすめ食材です。自分の手のひらくらいの大きさを目安に、一日3~4つ分は摂るようにしましょう。たっぷりの野菜と適量の炭水化物とともにバランスよく組み合わせ、一日最低2食はちゃんとした定食風メニューをチョイスしましょう。貧血も疲れの原因です。貧血が治っただけで気分が上向きになる人は少なくないんです。
美味しいものを食べて、しっかり眠るだけで、気持ちが明るくなります。軽い五月病気味になっても、しっかり体の疲れをメンテナンスすれば回復していくことが可能です。
繁忙期がきたり、大きなプロジェクトを任されたりして心身ともに疲れたときにも、睡眠、食事、3つのRを心がけて。それでも症状が治らなければ、心療内科や精神科に相談しましょう」(奥田先生)
奥田弘美(おくだ ひろみ)先生
精神科医、日本マインドフルネス普及協会代表理事。平成4年山口大学医学部卒。精神科医・産業医として働く人の心身のストレスケアに日々関わっている。またわかりやすいストレスケア法やマインドフルネス瞑想を執筆や講演、セミナーにても紹介している。著書には「心に折り合いをつけてうまいことやる習慣」(すばる舎)、「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「心の毒がスーッと消える本」(講談社)などがある。
朝、気分を上げたいときは…
image via Shutterstock