前回の記事では、効率的に筋肉を増やすためのトレーニング方法をご紹介しました。
フィジカルトレーナー中野ジェームズ修一さんによると、トレーニングと同じくらいに大切なのが食事だと言います。最終回は、筋肉を増やす食事について伺います。
筋肉の繊維になる「材料」を補給する
image via shutterstock筋トレをすると、筋肉の繊維が破壊されます。それが修復されることにより、筋肉は増えていきます。ところが、修復する際に材料がないと、筋肉は大きくならないのです。
「この材料がたんぱく質です。10代、20代であれば、少量のたんぱく質でも筋肉を合成する反応が起きますが、年齢とともにその反応が起きにくくなります。
つまり、同じ量のたんぱく質を摂っても、30代以上になると筋肉の材料になりにくい、ということです。数字でいうと、若い人なら7~10gのたんぱく質でも筋肉が作れますが、年齢が高くなると25~30gのたんぱく質が必要ということになります」(中野さん)
さらに、たんぱく質には「アミノ酸スコア」というものがあります。これは、食品中に含まれる必須アミノ酸含有率を示したもので、まんべんなく含まれているほど、満点の100になるというもの。
「100点の食品が最も良質で、筋肉によいたんぱく質が含まれているということになります。
満点なのは、まぐろの赤身、サケ(生)、和牛サーロイン(脂身なし)、若鶏むね肉(脂身なし)、豚肉、卵白、牛乳などです。
また、筋肉がつきづらい方は意識的に増やす必要があります。豚肉、魚、鶏胸肉の3つは、毎日食べてください。それから卵は1日2個以上。牛乳はコップ2杯飲む。このくらいを目安にするとよいでしょう。これでたんぱく質の量は大体クリアできるでしょう」(中野さん)
さらに、アミノ酸スコア100のものを摂るときに、ビタミンB群の多く含まれているものと一緒に合わせて食べるのがよいそう。ビタミンB群の多い食品は、玄米や豆類、ナッツ類、ゴマ、きのこ。こういった食品と合わせて摂ると、さらに吸収がよくなります。
体重1kgに対し、たんぱく質1.2~1.4gが目安
image via shutterstockでは、どれくらい摂ればよいのでしょうか。厚生労働省では、一日50gのたんぱく質を摂ることを推奨していますが、筋トレを始めた方で筋肉を増やすためには、体重1kgに対し、1.2〜1.4gを摂る必要があると中野さんは指摘します。体重が50kgなら、60g〜80gは必要、ということです。
「どうやって計算すればいいかというと、自分の手のひらを目安にしてください。自分の手のひらサイズの肉や魚で大体20g。ですから、1日に60gのたんぱく質が必要な人は、1食につき手のひら分のたんぱく質が必要ということになります」(中野さん)
ダイエットのために、また野菜不足を補うためにサラダランチなどを食べる女性も少なくないですが、それでは明らかにたんぱく質不足。今日から自分のたんぱく質摂取量をチェックしてみましょう。
なぜ運動後30分が重要?
運動後30分以内にタンパク質を摂ると、それがほとんど筋肉を合成するほうに使われます。
「いわゆる筋肉のためのゴールデンタイムです。筋トレ後、30分間がゴールデンタイムのピーク。そこから1時間半後くらいまで。たんぱく質は筋肉に吸収しやすくなっています。しかし、最初の30分が勝負。最も吸収が高い時間なので、例えばジムで運動した後に牛乳を飲んだり、ゆで卵を食べるのもおすすめです」(中野さん)
せっかくのトレーニングを無駄にしないために、筋肉の材料を効率よく体に入れてあげましょう。
1日14品目チャレンジ
image via shutterstock毎日の食事は、「14品目」を心掛けるのがよいそうです。最近は、カロリーよりもバランスを見ることを推奨されています。
「この食事の仕方をすると、過食によって太ってしまった方は痩せてきますし、ある程度筋肉量も維持できます。栄養バランスも、非常によくなります」(中野さん)
食べ方は、1カテゴリーを1日に1回食べるというもの。穀類は1回でなくてもよいですが、少なめに摂るようにします。14品目とは、以下のカテゴリーです。
穀類 いも類 魚介類 乳・乳製品 海藻類 淡色野菜 油類 きのこ類 肉類 卵 果物類 緑黄色野菜 嗜好品「たとえば、朝食でハムエッグ、トマト、いちごを食べたとします。すると、ハムは肉類。エッグは卵、トマトは緑黄色野菜、いちごは果物。このカテゴリーは、もう食べたことになるので今日は終わり、というものです。
ところが、たんぱく質に重要な肉類がハム1枚で終わってしまう。これではたんぱく質が足りません。つまり、ハム1枚の朝食ではダメということになります。
カロリーを計算するのではなく、このようにカテゴリーをまんべんなく食べることにより、栄養のバランスを整えることができます。ただし、1カテゴリー1回ですから、きちんと食べなければいけません。トマト1個で緑黄色野菜が終わるのはもったいないですね」(中野さん)
14品目チャレンジで、バランスのよい食事習慣が続けられます。食事なくして健康な体づくりはできません。筋肉を増やし、健康になるために、筋トレと食事で、自分を整えていきましょう。
中野ジェームズ修一さん
スポーツモチベーションCLUB100最高技術責任者、PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー、米国スポーツ医学会認定 運動生理学士(ACSM/EP-C)フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。主な著書に『医師に運動しなさいと言われたら最初に読む本』(日経BP社)、『青トレ』(徳間書店)などベストセラー多数。
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撮影/中山実華(3枚目)