精神科医で禅宗の僧侶である川野泰周先生は、自己肯定感は誰でも必ず上げることができると言います。6月は、「自己肯定感を上げる方法」を、毎日ひとつずつご紹介します。
自己肯定感とは、自尊心と似ているようですがまったく異なるものです。たとえば、社会的に成功している、収入が多いなど、「他者と比較して得られる優越感」から育まれるのが自尊心。
そうではなく、自分を認めてあげる、自分の存在価値を肯定してあげられる心が自己肯定感です。自尊心は失う可能性があるものですが、自己肯定感はそう簡単に失われることはありません。
自己肯定感が高くなると、不安に振り回されることがなくなります。心がしなやかになり、強くなります。人間関係で悩むこともなくなるでしょう。何より、自分を愛することができるようになります。
実は、日本人の自己肯定感は、先進各国の中で最低水準と言われています。自己を肯定できる若い人たちは、50%を切っているのです。自分を肯定できない=心が折れやすいということです。それは、「人と同じでいなさい」、「親の言うことを聞きなさい」と、自己を抑圧しがちな教育の中で育つことが一因だと考えられます。
自己を肯定=今のままでよいということになり、「それならば成長しなくてもよいのでは?」と思うかもしれません。それは自己肯定感においては、ある意味正解です。
しかし、「今のままの自分ではダメだ、もっとこうなるべきだ」と考えがちな人ほど自分を常に否定し、認めることができず、自己肯定感を上げることが難しくなります。
では「成長しなくてよい」と物事を投げ出してもよいかというと、それも少し違います。できる自分もできない自分も肯定しながら希望に向かっていくことで、自己肯定感をどんどん上げていくことができるのです。
明日からご紹介するものごとの考え方や具体的なワークなどから、自己肯定感を少しずつ上げていきましょう。
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川野泰周(かわの たいしゅう)先生
臨済宗建長寺派林香寺住職/RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。2005年慶応義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より大本山建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を行った。現在は寺務の傍ら精神科診療にあたり、マインドフルネスや禅の瞑想を積極的に取り入れた治療を行う。著書に『ずぼら瞑想』(幻冬舎)、『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)などがある。精神保健指定医・日本精神神経学会認定専門医・医師会認定産業医。
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取材・文/島田ゆかり、image via shutterstock