アスリートとして減量を強要されたのはメアリー・ケインさんだけではないはずです。でも、彼女がナイキのランニングチームを辞めるまでのストーリーはあまりにも壮絶で、減量の危険性を如実に物語っています。
かつて「米国一速い少女」だったケインさんは、コーチが変わると同時に「やせろ」と言われ続けることになりました。その後パフォーマンスは低下し、プレッシャーに押されるように精神状態も悪化していってしまったのです。
「フィットネス=ダイエット」ではない
本来、減量とフィットネスは同義ではありません。でも、最近のフィットネスに関するメッセージでは両者が同じ意味で語られることが多く、特に女性に対するメッセージではその傾向が高まります。
この不愉快な二分法は、男性向けに『Bigger, Leaner, Stronger』という本を書いている著者が、女性向けには『Thinner, Leaner, Stronger』という本を書いていることからもうかがえます。
また、Instagramでフィットネス関連のアカウントをフォローすると、ビキニの写真がたくさん出てきます。Redditの女性・ノンバイナリー向けのフィットネスコミュニティ「r/xxfitness」をスクロールすると、毎日のようにやせた自分の写真を誇らしげに掲載している人がたくさんいます。
「理想的な体」は一時的なもの
でも、フィットネス本来の目的は健康で強くなること。そのために、やせたり腹筋を割ったりする必要はないはずです。フィットネスの最終目的地として、それは自然ではありません。
ぜい肉のない写真をアップしているモデルやボディビルダーも、実際は1年のほんの短い期間に写真を撮りためて、それを小出しにしていることが多いようです。
Instagramでウェイトリフティングのオリンピック選手をフォローしていると、大きな大会の前の週には小柄なリフターの多くがビキニの写真を載せています。彼らは集中的に不健康な減量を行っており、写真に写っている割れた腹筋は、ほんの一時期しか維持されません。
ダイエットとワークアウトを切り離そう
そもそも彼らが厳しい減量に挑むのは、オリンピック選手として選抜されやすい階級を計算しているからであり、それ以外の時期に体型を維持する必要はないのです。(この点については、アリッサ・リッチーさんのポッドキャストを聴いてみてください。減量がきつすぎて大会で実力を出し切れなかったエピソードを語っています。)
実際は、ウェイトリフティングやパワーリフティングといった力強さを競うスポーツをするなら、長い目で見れば体重を増やしたほうがパフォーマンスが向上するはずです。ところが、「快調」と「やせていること」が同義であると普段から考えている人や、ダイエットとワークアウトが切っても切り離せないと考えている人には、そのことが理解できません。
swole womanことCasey Johnstonさんが書いているように、ジムでうまくいかないときは、「自分へのハンバーガーのご褒美が必要なだけ」というケースが多いようです。
Decoupling “working out” from “losing weight” in your mind is one of the best things you can do for your physical and mental health.
— Chelsea Fagan (@Chelsea_Fagan) 2019年10月1日
頭の中で「ワークアウト」と「減量」を切り離すことが、身体と心の健康を保つためにできる最善の策です。
パワーリフティングのチャンピオンであり、コーチでもあるナタリー・ハンソンさんによると、強くなりたいと彼女のもとを訪れる女性の大半は、階級を落とすことも希望するそうです。
(インタビュアーのGreg Nuckols氏は、女性のクライアントに2階級上げてほしいと思っても、1階級アップをすすめることが多いそうです。それでも応じたがらないことがほとんどだとか。)
「コーチを雇うほどにはこの競技に興味があるのに、同時に63キロ級になりたいと望むんです。でもその数字って、パワーリフティングの関係者が、言うなれば何の根拠もなく決めた値じゃないですか」
減量ばかりに気を取られてはいけない
別のポッドキャスト「Empowered by Iron」では、2人の女性ホストが聴衆に対し、リフティングを始めたときに知っておきたかったことを尋ねました。その結果、多かった回答のひとつが、「もっと食べておけばよかった。もっと多くの炭水化物を。あんなに減量を気にしなくてよかった」でした。これには筆者も同感です。
いま、筆者がもっと強く、もっと競争力を高めるためには、体重を増やす必要があるのだと思います。でも、体重計に乗るたびに驚き、気が変わってしまいます。メアリー・ケインのようなスポーツ選手でさえ、やせれば成績がついてくると言われていました。
でも、それは真実ではありません。個人的事情や医学的な理由で太ったりやせたりする必要があるなら、そうすればいいでしょう。でも、減量とフィットネスがセットであるという考えは、いますぐ捨ててください。それは、ただの都市伝説にすぎません。
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