自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「ウイルス対策にもなる唾液」について、お届けしました。今回は、「慢性便秘」について、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

便秘は、女性ならだれもが悩んだことのある不調です。「このくらいなら大丈夫。特に苦しくないし、便秘じゃない!」と思う人、また「毎日出ているけど、すっきり出た感じがしない」人の中にも、排便に“満足感”がなければ、改善すべき便秘の可能性があることがわかってきました。あなたのお通じはバナナ便が出ていますか? 慢性便秘症かどうかをチェックしてみましょう!

こんな症状に当てはまったら、実は便秘の可能性が!

あなたのお通じをチェックしてみてください。これらの自覚症状に当てはまると、便秘(慢性便秘症)の可能性があります。

排便時間が1分以上かかる 排便時に力む 便がうさぎの糞のように硬い 排便時に痛い 便意を感じない お腹が張り、痛いこともある トイレに行っても、その後何回も行かなければならないことがある 排便した後にお尻の穴が詰まったような感じがあり不快である

ひとつでも当てはまったら、慢性便秘症の可能性があります。

毎日お通じがあっても、不快症状があれば慢性便秘症!

今まで、医師の間で統一された便秘の定義は、ありませんでした。

しかし、2017年に初めて『慢性便秘症診療ガイドライン』が出て、便秘の定義ができました。便秘とは、「本来、体外に排出すべき糞便を十分量、かつ快適に排出できない状態」とされたのです。

これまでは、「排便時に苦しい」「少ししか出なくてスッキリしない」といった症状があっても、毎日少しでも排便があれば、「便秘ではありません」と医師から言われたことがあるのではないでしょうか。

しかし、ガイドラインでは、毎日排便があっても、“排便困難感や残便感、不快感”など、便秘にともなう症状で“日常生活に支障”があれば、慢性便秘症と診断して、治療の対象となりました。

便秘症は、薬局、ドラッグストアで購入する市販薬を服用している人も多いですが、便秘薬は適切に使用しないと、逆に悪化させてしまうこともあります。また、病院を受診しても、満足感がないまま、同じ治療を継続している人も少なくありませんでした。

しかしながら、ガイドライン発行とともに、ひとりひとりの排便満足度に着目した治療へとゴールが変わってきています。

もしも便秘に当てはまったら、バナナ便に治しましょう! 

病院で処方される便秘治療薬を使っているにもかかわらず、コロコロ便や硬い便の人が約50%もいると言われています。そういう人は、お薬を変えてもらうことが大切です。

今、便秘治療のゴールは、バナナ便か、それに近い便で、排便時間も1分以内で残便感のない状態を目指しています。また、便意を感じないのも問題です。便意の回復も、重要なポイントです。

病院の治療でも、「スッキリ気持ちいい!」と感じる満足度が高い排便が治療のゴールになっています。

すっきり気持ちいいバナナ便に変えたい方は、便秘に詳しい消化器内科や内科、便秘外来を受診してみてください。

新しい慢性便秘薬が続々登場しています

腹痛などの腹部症状と、便秘や下痢などの排便異常を慢性的に起こす人の治療薬として、「浸透圧性下剤」と「上皮機能変容薬」がガイドラインで“強く推奨”されています。

浸透圧性下剤」は、便を柔らかくする作用がある「酸化マグネシウム」と呼ばれる薬です。昔から使われ、市販薬もある比較的安全な薬です。

さらに「上皮機能変容薬」は、新たな治療薬です。便を軟らかくして、腸の輸送能力を促進させる作用がある薬です。

この薬には、「ルビプロストン(アミティーザ)」という医師処方薬が2012年に登場しています。ただし、気持ち悪くなったり、効きすぎて、お腹を下しやすい欠点もありました。

そこで2019年、腹部膨満感、腹痛・腹部不快感がある慢性便秘症の「上皮機能変容薬」として「リンゼス」という薬が新たに加わりました。

便をやわらかくし、腸の輸送能力を促進します。また痛み刺激が抑制され、腹痛を訴える慢性便秘症の人への効果が期待されています。すでに、便秘型過敏性腸症候群(IBS)の治療薬として認可されていましたが、慢性便秘症にも適応が広がりました。

もうひとつ、新しい便秘薬が出ています。胆汁酸で消化管の運動促進と便意を回復させる効果があるという「グーフィス」という薬です。

腸管内の胆汁酸が不足すると、腸の蠕動運動が低下し便秘を発症します。そこで、胆汁酸の再吸収を抑制して、大腸内に流入する胆汁酸の量を増加させ、腸の蠕動運動を活発化させます。便意のある自然な排便を促すお薬です。

注意したいのは、市販薬に多い「刺激性下剤」です。アントラキノン系(センノシドやアロエなど)ジフェニール系(ビサコジル、ピコスルファートなど)があり、漠然と長期連用すると耐性ができ、難治性便秘になってしまうリスクがあります。

これらの「刺激性下剤」は、「上皮機能変容薬」や「浸透圧性下剤」で効果が不十分なときに、頓服として使用することが望ましいと言われてます。

便秘改善には、排便姿勢が大事!

また、お薬だけでなく、日常生活の改善も大切です。これまで、あまり注目されてこなかった排便姿勢がじつは、大事なことがわかってきました。

腹圧をかけて便を押し出す際に、便の出やすい方向があります。背筋を伸ばしてまっすぐに座る姿勢では排便しづらく、かといって前傾しすぎも、後傾しすぎも、NGです。

ちょうど、ロダンの彫刻“考える人”の姿勢のように、肘を膝につける前傾姿勢がベストと言われています。

ほかにも、セルフケアとしては、日常生活で睡眠、食事、運動などの改善も、快適なお通じのためには大切です。

睡眠時間をたっぷりとる 規則正しい生活 規則正しい食事 食物繊維を摂る 水分を十分摂る 運動をする

快便のためには、生活習慣全体を整えることも大事ですね。

もっとカラダ戦略術を読む

生理の出血が多い女性のうち8割は貧血かも! 疲れやすい、だるい人は要注意

歩くたびに痛い! タコやウオノメの原因は靴ではなかった

増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ :http://office-mikamasuda.com/

image via shutterstock

RSS情報:https://www.mylohas.net/2020/04/212016strategy70.html