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自らに優しさを向けて/禅僧・精神科医 川野泰周さん[Hello 2021, Thanks 2020]
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自らに優しさを向けて/禅僧・精神科医 川野泰周さん[Hello 2021, Thanks 2020]

2020-12-31 21:00
    大きな変化の年となった2020年、禅の教えとマインドフルネスを根底にしたその言葉で、私たちの揺れる心に寄り添ってくれた僧侶で精神科医の川野泰周さん。本年最後の締めくくりに、川野さんにアンケートでゆく年くる年を語ってもらいました。

    「今を大切に、ていねいに生きること、自分に優しさを向けること、大切な人たちを慈しむこと」

    川野さんのメッセージは、MYLOHASが2021年に大切にしていきたいキーワードとなりました。

    世の中が大変になるほどに、人の笑顔の温かさを知った2020年

    2020年は人々にとって、また川野さんにとって、どんな1年でしたか?

    2020年は人類が自然との共生について考える必要性に迫られていることを知る年であったと感じています。そして、距離は離れていても、互いの心を支え合えると知ることもできた年です。

    私事では、昨年までは坐禅会や各地での講演を通してマインドフルネスの普及に取り組んでおりましたが、コロナ禍となり皆さまが集まることが難しくなる中、マインドフルネスを日々の生活に取り入れるためにスマホアプリが活用できることに着目しました。

    こうしたアプリを開発しておられる企業の皆さまと、瞑想ガイドの作成や、睡眠に対する効果検証、脳血流測定デバイスを用いた脳機能への効果検証などの取り組みに新たに関わらせていただいております。

    また、患者さんや、坐禅会の参加者様、マインドフルネス講座の生徒さん達からいただく笑顔一つひとつがプライスレスな宝物です。世の中が大変な状況になるほどに、人の笑顔の温かさ、思いやりの心のありがたさに気づくことができました。

    私たちはいくつになっても心を洗い清められる

    2021年、取り組みたいことまたは心がけたいことは?

    寺院のお勤めと精神科診療をこれまでと同様、日々誠心誠意続ける所存です。その上でさらなるマインドフルネスとコンパッションの啓蒙のため、分野や対象を問わず、広くその重要性を伝える活動を加速してまいります。

    なかなか自分の時間はありませんが、もしできるのならキャンプでゆっくりとマインドフルな時間を自然とともに体験したいです。

    健康のために「これを心がけます」ということがあれば教えてください。

    朝、境内の掃き掃除をすると、落ち葉とともに心の汚れも掃き清められるように感じます。いわゆる「お掃除瞑想」ですね!

    2020年、改めて印象に残った言葉がありましたら教えてください。

    洗心無垢(せんしんむく)」という言葉です。

    これは古からの禅語ではなく、曹洞宗の僧侶だった母方の祖父が生前に考案し、風呂場のタイルに書いたものです。

    幼い頃の私は、母の帰省で祖父が住職をしていたお寺で、一日中汗まみれになって遊びました。そして夕方になるとお寺にあるタイル張りの大きなお風呂に入らせてもらうのが楽しみでした。

    いつもその四字を眺めながら湯船に浸かっては、子供ながらに素敵な言葉だなと感じていました。

    生まれた時は誰もが純真無垢な心を持っていますが、社会経験とともに、固定観念という名の絵の具で色付けされてゆきます。

    でもきっと私たちはいくつになってからでも、石鹸で身体を洗うがごとく、この心を洗い清めることができるはずです。

    そんなことを考えさせてくれるこの「洗心無垢」は私にとって、地域の人たちに永く慕われた祖父からの贈り物です。

    ステイホーム期間を利用して、自らの心と静かに向き合って

    2021年を前向きに過ごしたいと思っている読者にメッセージを

    世界中がコロナ禍の影響を受け、当たり前の日常が一変することを誰もが経験した2020年に別れを告げ、また新たな年が始まります。

    留まるところを知らないウィルスの猛威は、私たちにさらに自粛生活を突き付け、自宅で家族と過ごす、あるいは一人の時間が多くなることが当面の間は続くでしょう。家でテレビや雑誌、ネットニュースを見れば、そのめくるめくコロナ報道の嵐に翻弄され、心の置きどころが分からなくなってしまうかもしれません。だからこそ、ステイホーム時間を活用して、自らの心と静かに向き合ってみていただきたいのです。

    マインドフルネスは、意識を心の内側に置き、穏やかに調えるための最良の実践法です。日々少しの時間でも継続していただくことで、その積み重ねによって相乗的な作用がもたらされます。瞑想をしたその場で気分がスッキリするというのも良い効果ですが、本当に大切なことは、自らをいたわり、思いやる心を育む作用であると私は考えています。

    日々意識して続けることで気付かぬうちに、今を大切に、ていねい生きること、そして自らに優しさを向け、大切な人たちを慈しむ心の在り方を、私たちにもたらしてくれます。

    このような時代にこそ、心の内側で起こっていることを静かに見つめ、新たな年を心安らかにお過ごしいただけますことを願っております。

    川野泰周(かわの・たいしゅう)さん
    臨済宗建長寺派林香寺住職/RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。2005年慶応義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より大本山建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を行った。現在は寺務の傍ら精神科診療にあたり、マインドフルネスや禅の瞑想を積極的に取り入れた治療を行う。著書に『ずぼら瞑想』(幻冬舎)、『会社では教えてもらえない 集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)などがある。精神保健指定医・日本精神神経学会認定専門医・医師会認定産業医。

    川野泰周さんに聞く、優しくて強い心の持ち方

    たった数分で心を癒し、脳の疲れも回復させる方法は?

    禅僧が教える、感情に飲み込まれない人になる心のワーク

    不安を手放せないのはなぜ? 心理的な理由と解決策

    Image via Shutterstock, Getty Images

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