体によい食べものとして人気のはちみつ。たくさんの種類が販売されているとともに、近年ではローヤルゼリーやプロポリスといった「みつばち産品」も注目されています。

そこで気になるのが、健康維持に役立つはちみつをはじめとした、みつばち産品の選び方

今回は山田養蜂場研究員の松﨑英典さんに、 はちみつを中心としたみつばち産品のエビデンスに基づく用途別の選び方をレクチャーしてもらいました。

Q1.「感染対策」におすすめのはちみつは?

A1. 「マヌカはちみつ」、その次に「ソバはちみつ」

まずは、インフルエンザや風邪など感染症の予防に役立つ「抗ウイルス活性」の高いはちみつです。

この点で松﨑さんが「頭ひとつ抜け出ている」と話すのがマヌカはちみつ。ある研究でレンゲ、アカシア、ソバ、マヌカ、甘露はちみつの5種類で抗インフルエンザウイルス活性を調べたところ、マヌカはちみつの特徴が明らかになりました(※)。
※出典:Arch Med Res, 45(5), 359-365(2014)

「 5種類のはちみつの中で、マヌカはちみつの抗インフルエンザウイルス活性が最も高いことが示されました。これは、マヌカはちみつに含まれるメチルグリオキサールの働きです。メチルグリオキサールの量が多いほど、 高い抗インフルエンザウイルス活性が期待できます。 (※) 」(松﨑さん)
※出典:Arech Meel Res,46(1),8-16(2015)

最も少ない量で抗インフルエンザウイルス活性が得られたのはマヌカはちみつだった。出典:Arch Med Res, 45(5), 359-365 (2014) 

メチルグリオキサールとは、マヌカはちみつに含まれる希少な抗菌成分のこと。 一般的にマヌカはちみつのメチルグリオキサール含有量の多さはMG値といった数値で表記され、「MG100+」以上のマヌカはちみつが高品質といわれています。つまりMG値が高いほど抗菌成分の含有量が多く、さらにマヌカはちみつの味が異なるところも特徴です。

なお、マヌカはちみつに次ぐ抗インフルエンザウイルス活性を示したソバはちみつは、鉄分が多く黒っぽい色合いが特徴。独特の黒糖のようなコクがあるため、料理の隠し味に使ったり、バニラアイスと合わせたりすると美味とのこと。

いっぽう甘露はちみつは、カシやマツ、モミ、トウヒなどの樹木からでる樹液を昆虫が濃縮したものをミツバチが集め、はちみつに仕上げたもの。ヨーロッパでは「森の蜜」と呼ばれ、伝統的に食されているそうです。

Q2. 「子どものむし歯・歯石対策」におすすめのはちみつは?

A2. 虫歯菌には「マヌカはちみつ」、
歯石には「コーヒー/ペパーミント/ユーカリはちみつ」

「虫歯のある9~12歳の子どもの虫歯菌を減少させる」というのも、マヌカはちみつの効果のひとつだと松﨑さん。甘い印象のあるみつばち関連製品が、虫歯菌にいいというのは驚きです。

「虫歯のある9~12歳の子ども30名の歯にマヌカはちみつを塗布する処置を21日間行ったところ、ミュータンス菌という代表的な虫歯菌の一種が減少することが確認されています(※)」(松﨑さん)
※出典:J Indian Soc Pedod Prev Dent. 2014 Jul-Sep;32(3):212-9.

さらに、はちみつには「歯石予防」の効果も

「18種類のはちみつにおける歯石予防効果を試験管内で比較したところ、いくつかのはちみつに代表的な抗歯石剤と同じ程度の歯石予防効果があることが確認されました。とくに効果が高かったのは、コーヒーはちみつ、ペパーミントはちみつ、ユーカリはちみつ、甘露はちみつの4種類です(※)」(松﨑さん)
※出典:J Periodontal Res. 2008 Aug;43(4):450-8.

これら4種類に共通するのは、暗黒色や褐色など色の濃いはちみつであるということ。コーヒーはちみつは、甘さの中にほのかな酸味を感じる味だそう。見つけたらぜひ試してみたいですね。

一つ注意したいのは、はちみつは満1歳未満の乳児には食べさせてはいけないということ。1歳未満の乳児は、抵抗力も弱く生野菜などの自然のものは避けた方が良いといわれています。その意味では、はちみつも生野菜などと同じ、熱を加えない自然な食品ですので、直接食べさせることは避けたほうがよいそうです。

Q3. はちみつでも低GIのものってある?

A3. あります。蜜源となる花の種類によってもGI値が異なります。
特に低GIなのは「ルーマニア産のアカシアはちみつ」

松﨑さんによると、ルーマニア産のアカシアはちみつに関して、「血糖値・インスリンへの影響が相対的に低い」というデータがあるといいます。

「山田養蜂場の研究機関である、みつばち健康科学研究所で健康な成人男女(21~73歳)にルーマニア産アカシアはちみつを含む7種のはちみつを摂取してもらったところ、はちみつはブドウ糖(グルコース)と比べて血糖値が上昇しにくく、低GI食品であるという結果が得られました」(松﨑さん)

GI(グリセミック・インデックス)とは、食品を食べた後の血糖値が上がるスピードを数値で表したもの。はちみつのように食後の血糖値が上がりにくい低GI食品は、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防につながると考えられています。

みつばち健康科学研究所調べ。健康な成人男女(21~73歳)に、異なる7種類のはちみつを摂取してもらったところ7種の中ではアカシアはちみつ(日本産、ルーマニア産)が最もGI値が低く、血糖値が上昇しにくいという結果が得られた。

さらに、はちみつの種類は特定されていませんが、「はちみつに含まれるラフィノースとグルコン酸という成分が腸内環境を整える (※)」というデータもあります。
※出典:ビフィズス8.1 (1994): 1-5、ビフィズス8.1 (1994): 29-35

ラフィノースとグルコン酸は、どちらも摂取することで善玉菌であるビフィズス菌を増やすとのこと。ラフィノースが豊富なのは、アカシアやクリ、ナノハナ、リンゴ、レンゲのはちみつ。グルコン酸はアカシア、レンゲ、ソバ、ミカン、ヒマワリ、ローズマリーなどに含まれており、とくにユーカリやニアウリのはちみつに多いそうです。

Q4. 免疫の要「腸管免疫」を高めてくれるのは?

A4. 「ローヤルゼリー」

栄養豊富な女王蜂の食べものとして、古くから珍重されてきたローヤルゼリー。ローヤルゼリーを食べ続ける女王蜂の大きさは働き蜂の約2~3倍、寿命は30~40倍にもなり、ハチミツとはまた違う驚異的なパワーが感じられます。松﨑さんによると、最近ローヤルゼリーのある働きが発見され、注目されているといいます。

「それは、ローヤルゼリーに含まれる10-ヒドロキシデカン酸(以下「デカン酸」)という成分に、腸管免疫の活性化に必要なM細胞を増やす働きがあるということです。

免疫力は加齢により低下し、感染症やがんにかかりやすくなることは周知の事実です。免疫細胞の60~70%は腸に存在しており、これらの『腸管免疫』を高めることが健康長寿・感染防御に効果的だとされています。

M細胞というのは、腸の門番であり、様々な免疫細胞の司令塔として働く樹状細胞に、病原体を引き渡す役割を担う細胞です。つまり、M細胞は腸管免疫の起点であり、M細胞を増加させることで免疫細胞の活性化につながります。ローヤルゼリーに多く含まれる10-ヒドロキシデカン酸には、このM細胞を増やす働きがあったのです(※)」(松﨑さん)
※出典:Biol Pharm Bull. 2020;43(8):1202-1209.

また、M細胞を増やす食品はローヤルゼリーしか発見されていないとのこと。確かに画期的な研究成果です。

Q5. 肌の乾燥、しみ、毛穴の悩みには?

A5. 肌悩みのインナーケアにも「ローヤルゼリー」

ローヤルゼリーの効果はこれだけではありません。

「2020年に発表された別の研究では、乾燥肌に悩む20~79歳の男女79名に酵素分解ローヤルゼリーを12週間飲用してもらったところ、肌の角層水分量、色素沈着、目立つ毛穴の改善が確認されました(※)」(松﨑さん)
※出典:薬理と治療, 48(1), 79-88, 2020

酵素分解ローヤルゼリーとは、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質を細かく分解したものです。

ローヤルゼリーに肌の乾燥やしみ、毛穴の悩みに役立つ効果があったとは。免疫アップにも、美容にも役立つ希有な食品であることは間違いありません。

咳止めにもはちみつがおすすめ

はちみつによる健康効果は、他にもたくさんあると松﨑さん。

「たとえば、1~12歳の風邪患者の子ども87人がティースプーン1~2杯のはちみつを2週間飲用したところ、咳止め薬(ジフェンヒドラミン)と同等以上に咳の頻度や重症度が改善したというデータがあります(※)。
※出典:PLoS One. 2017 Jan 19;12(1):e0170277.

世界中にレアな“ご当地はちみつ”が存在し、まだまだ未知なる可能性が秘められていそうな「はちみつ」の世界。松﨑さんのお話を参考に、ぜひ自分が求める用途にあったものを探してみてください。

松﨑英典(まつざき・ひでのり)さん
2012年山田養蜂場入社。R&D本部 / R&Dサービス開発室所属。商品素材のヒトでの有用性研究に従事。現職ではR&Dで得られた知見等を活かし、研究学術情報を集約・発信する業務に従事している。

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山田養蜂場

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