ゴールは「集中力」ならぬ「夢中力」
著者の井上一鷹さん。自身が立ち上げたワークスペース「Think Lab」にて。この本を手にとり、裏表紙に書かれた「本書はぜひ、スマホの電源を切ってからお読み下さい」という言葉にハッとしました。
スマホをオフにして読書するなんて、久しぶりというか記憶にもなかった私。集中力が落ちた、何をしても没頭できない──という悩みの原因が、うっすらと見えてきた瞬間でした。
本書の著者である井上一鷹さんは、人呼んで“集中の超プロ”。メガネのJINS(ジンズ)で「JINS MEME」という集中力を測定できるメガネ型デバイスの開発に携わり、その研究成果をもとに「世界で一番集中できる場所」というコンセプトのワークスペース「Think Lab」を立ち上げるなど、集中力や働き方に関する様々な提案をおこなっています。
本書はそんな井上さんが1万人以上のデータと実践経験から編み出した「深い集中」を取り戻す43の技法を紹介したもの。しかも、ゴールは単なる集中力ではありません。人生をもっと楽しく幸福にしてくれる、「夢中力」にたどり着くための本なのです。
人間は「ただ集中する」だけで幸福になれる
親に電気を消されるまで本に夢中になったり、泥遊びに時間を忘れて没頭したり。「ああ楽しかった!」と思える瞬間が、子どもの頃は今よりもたくさんあった気がします。
井上さんによると、これは「集中」の性質によるもの。「ただ集中できる」という状態があるだけで、人間は深い幸福感を得ることができるというのです。
集中に関する研究で有名なのは、心理学者のミハイ・チクセントミハイの研究で、集中の極致と言える「フロー体験」というものが定義されています。
それによれば、時間を忘れるほどの集中(フロー体験)によって、人はえも言われぬ高揚感を得られるということです。集中できる人は、それだけで自己肯定感を得られて、幸せを感じるのです。
(『深い集中を取り戻せ』10ページより引用)
フロー体験の研究は、「意義」と「快楽」に続く人類の3つ目の幸福を見つけた、といわれているそう。しかし残念ながら、私たちの「集中」はスマホをはじめとするさまざまな誘惑によって脅かされています。
マイクロソフト社の研究結果では、金魚の集中力が9秒続いたのに対して、現代人の集中力はわずか8秒しか続かなかったとか。コロナ禍でリモートワークが浸透したことで、在宅での環境の整え方や時間の過ごし方といった新たな問題も生まれています。
視界の「10~15%」が緑だと集中力がアップする
そこで井上さんが提案するのが、「個人が今すぐ変えられること」で集中力を取り戻すという解決策。比較的ラクにチャレンジできそうなのが、「五感を活性化する刺激を与える」という技法でした。
まずは照明の使い方。リモコンで照明の色みを変更できるタイプを選び、集中したいときには「寒色系」、リラックスしたいときには「暖色系」に切り替えます。時間を決めて調光することで、体内時計も整うと井上さん。
さらにおすすめなのが、観葉植物を取り入れること。視界の120度内に緑色が「10~15%」含まれるようにするだけで、集中力が上がるといいます。
植物を見ると「落ち着いた気持ちになる」のは、植物によるゆらぎが副交感神経を優位にしているからです。
副交感神経を優位にし、リラックスした状態を作り出せば、仕事への集中は長続きしやすくなります。それに、副次的な効果として「直感の脳」を誘発し、アイデアが出やすい状態にもなるはずです。
(『深い集中を取り戻せ』126~127ページより引用)
このほかにも、集中したい時に適したアロマ(ローズマリーやペパーミント)や、「自然音(ハイレゾ)」で聴覚を刺激するなど、さまざまな技法が紹介されています。「集中しなきゃ」と思うと気が重くなりますが、それだけで幸せになれるなら話は別。まずは身近な環境作りから取り入れてみたくなりました。
深い集中を取り戻せ――集中の超プロがたどり着いた、ハックより瞑想より大事なこと
1,760円
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ゲームや漫画が楽しい理由もこれじゃないですかね?大人になってゲームや漫画に没頭できなくなった、っていうのは集中力が衰えているから?外部要因で集中できないから?かしら