息をのむほどに美しい、ブルーに輝く満天の星空。
実はこれ、夜空ではなくニュージーランドの北島にある「ワイトモ ケーブ(Waitomo glowworm cave)」という鍾乳洞の中に広がる光景なんです。そして星のように光っているものの正体は、土ボタルという虫でした!
「ワイトモ ケーブ」は、数千万年の時を経て自然が作りだした巨大な鍾乳洞。1887年に、ニュージーランドの先住民族のマオリ族と開拓者であるイギリス人によって発見されました。
マオリ族は暗闇をよしとせず、洞窟に入る文化や習慣がなかったため、約125年前まで、この洞窟は誰に入られることもなく、静かに眠っていたそうです。
鍾乳洞の奥に分け入ると......土ボタルが生息しているところへは、鍾乳洞の中をしばらく歩いて向かいます。鍾乳洞の中は、白い氷柱のように鍾乳石が四方八方から立ち並び、とても神秘的。なんと、一センチ成長するのに100年〜300年もの時間がかかるそうです。
そして、さらに鍾乳洞の奥へ行くために小さな手漕ぎボートに乗り込みます。闇の中、少しの光も音もない空間をしばらく進むと......そこには天井一面に輝く無数の土ボタルの姿が! まるで宇宙空間に迷い込んでしまったようです。
土ボタルはハエの幼虫の一種で、暗い洞窟天井に生息しています。とてもデリケートな生き物で、生息できる鍾乳洞はとても稀少なんです。ちなみに、天井から細い糸のように垂れ下がってみえるのは、土ボタルの粘膜。青白く光るのは、この粘膜に獲物をおびきよせるためなんだそう。
ただ静かに輝き続ける幻想的な光を放つ土ボタルですが、幼虫から成虫になり、産卵を終えたら寿命を迎えるそうで、その命はわずか数日間。
短い命と知りながら、生命力の全てをかけて光を放つ土ボタルの姿に、天体観測では決して感じられない、生命の神秘や生きることの意味を教えられた気がします。
[ニュージーランド政府観光局, waitomo glowworm caves, Just the travel]
(米田ロコ)