大震災と原発事故をきっかけに小説家の古川日出男さんは、宮澤賢治のヴィジョンを震災後の視点から戯曲化したオリジナル脚本「銀河鉄道の夜」を作りあげます。
その古川さんの朗読に、音楽家・小島ケイタニーラブさんの音楽と歌、詩人・エッセイスト管啓次郎さんの書き下ろしの詩、そして翻訳家・柴田元幸さんのバイリンガル朗読が加わり、いままでにない朗読劇「銀河鉄道の夜」が誕生。
職業も年代も違う4人が共に作りあげた声の舞台は、東北をはじめとした全国各地を巡り、様々な場所で言葉を紡いできました。
そんな彼らの2年間に渡る旅を収めたドキュメンタリー映画『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』が7月19日から公開になります。朗読劇の様子はもちろん、出演者のインタビュー、さらに、朗読劇の観客のひとりとして女優の青柳いづみさんが、彼らの訪れた東北の土地を再訪し、賢治を朗読します。
4人の個性がぶつかり合うとき震災後にこんな活動を行っている人たちがいたのか? 彼らの思いはどのようにして観客に届くのか? たとえ「銀河鉄道の夜」のストーリーや朗読劇を知らなくても、彼らの旅に引き込まれ、まるで、2年間一緒に旅をしたような気持ちにもなりました。
また、朗読劇といっても、ただ読み上げるだけのものではなく、今まで味わったことない新しい表現スタイルなので、彼らの生み出すパワーや空気感に圧倒されます。
ジャンルが違う4人だからこそ生まれるケミストリーや、この4人でしか生み出せないハーモニーがスクリーンを通して、ダイレクトに伝わってきます。学校、動く電車や待合室、酒蔵など、公演場所にあわせて変わる朗読劇なので、その進化を遂げていく様子も見どころです。
遅れてやってきた「スタンドバイミー」それぞれ自分たちの本業が忙しい中、合間をぬって行う朗読劇。
一度、乗ってしまった鉄道は途中で降りることなく、ただ突き進む。そんな彼らのパッションは、時に小学生のように純粋でまっすぐ、微笑ましくもありました。
さらに、旅を通して、彼ら自身の友情が深まり、お互いにどんどん共鳴してあっていく姿も感じ取れるんです。
旅する「銀河鉄道」が、東京にやって来る!7月20日(日)にはお茶の水の明治大学アカデミーホールで実際に「朗読劇「銀河鉄道の夜」2014 夏 東京特別公演」も開催。映画を観てから生の朗読劇を楽しんでもいいですし、朗読劇を体験してから、ドキュメンタリーで遡ってもよし。
東北各地や西日本を周り、再びたどり着く東京の地。この規模の舞台はおそらく最初で最後だそうなのでこれは貴重な機会です。
宮澤賢治の声を手がかりに「小説家」「詩人」「音楽家」「翻訳家」がひとつになって突き進める旅。あなたもこの列車に一緒に乗ってみてはいかがでしょうか?
[『ほんとうのうた~朗読劇「銀河鉄道の夜」を追って~』, 朗読劇「銀河鉄道の夜」]
7月19日より、ユーロスペースにて公開
(C)朝岡英輔/(C) Eisuke Asaoka