8月号連載記事
■競争戦略の核心その3 仕入れ力(節約力)
●差別化とコストコントロール
バフェット流で「ブランド力」と表現される内容は、ポーター的に言えば「差別化=競争力」と言えますし、ドラッカーの表現を借りれば「イノベーション」に相当するでしょう。
これら三つの内容は、全く同じではありませんが、同じことの違う側面に注目して違う表現をしているといえます。
例えば、一神教であがめる神はすべて同じ(イスラムは旧約聖書も新約聖書も経典の一つとして認めているし、イエス・キリストは周知のようにユダヤ人のユ ダヤ教徒であり、ユダヤ教の聖典である旧約聖書を認めている)なのに、イスラムではアッラー、ユダヤ教・キリスト教ではヤハウェ(エホバ)と呼び、それぞ れ全く違った宗教としてお互いに敵対しているようなものです。
また、バフェット流で「仕入力」と表現される内容は、ポーター風に言えば「コストコントロール」、ドラッカーにおいては「業務の科学的分析」に相当します。
要は「企業・(製品・サービス)の価値を高める」ことと、「より安いコストで企業を運営し、より低価格で製品(サービス)の価値を高める」ことが「競争戦略」の両輪ということです。
今回は「より安いコストで企業を運営し、より低価格で製品(サービス)の価値を高める」=仕入力に注目するわけですが、簡単そうに見えてなかなかできないのが「コストコントロール」です。
●本当に節約しているのか
コストコントロールというと、まず思いつくのは仕入(購入)コストの引き下げ、人件費のカット、無駄な経費(出張費など)の節約といったところでしょうか?
もちろんそれらの経費のコントロールは大事ですし、びた一文無駄な費用を使ってはなりません。しかしながら、一つ一つの業務にかかる費用を一生懸命節約しても、会社全体のコストの削減になるとは限らないというのが、ポーターが強く主張するところです。
例えば、品質・安全に関係が無い自動車工場の作業工程の一つを減らして、コスト削減に成功したとします。製造工程の中だけを考えているのであれば何の問題もなく、コスト削減の立役者として拍手喝さいを浴びるでしょう。
ところが、そのわずかな作業工程の変更が、自動車のエンジン音に微妙な影響を与えたとします。その車種の独特のエンジン音が気に入っていた顧客の一部は購入をためらうかもしれません。
あるいは、その事実を親切に教えてくれる顧客がいたとしたら、販売店で調整して元のエンジン音を復活させなければなりません。
逆に、工場が導入を希望していた最新鋭の製造装置の導入を「値段が高いし、まだ古い設備が十分使える」として却下したとします。もちろん、生産そのもの は続けることができますが、旧型の機械の製造効率は新型に比べて劣りますから、その分余分な人件費、(長時間運用による)余分な光熱費などがかかります。
さらには、旧型の装置の方が、故障率が高いとすれば、修理している間工場が稼働しなくなる(大規模工場がストップするとその損失は大きい)という望ましからざるコストも発生するということです。
<続く>
続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/8月号をご参照ください。
(大原浩)
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(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)