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少人数組織を運営するための哲学 その2
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少人数組織を運営するための哲学 その2

2016-09-10 00:37
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    わたしが属するヘッジファンドの業界は生き馬の目を抜く業界だ。
    毎日、成績で評価される。そのストレスから、心身ともに疲弊する日々だ。


    事実、毎年のように、ヘッジファンドは消滅する。
    以前の会社では、最後まで残った運用チームは3つだけだった。
    10以上の運用チームが7年間の間に解雇となった。
    そう、ヘッジファンドは、成績が悪いと解約されてしまうのだ。


    だから、わたしたちのチーム6人が、10年以上、ヘッジファンドマネジャーを続けられたことは奇跡に近い。


    この業界に関わらず、
    世間一般に、チーム運営は簡単ではない。

    なぜなら、人間関係が難しいからだ。
    人間関係は、些細なことですぐに壊れてしまう。


    わたしもチームの運営は試行錯誤の連続であったし、
    とくに、メンバー間の関係に苦慮してきた。

    この10年の組織運営において、「組織は、こうしたら上手くいくぞ!!!」
    という経験則を得た。


    その経験から、基本となる組織運営の哲学が生まれた。
    チーム運営に悩むリーダーの方々に、特に、読んでもらいたい。



    ■意味のあることを成す


    わたしは、アナリストが引退するときのために、
    アナリストには、こう言っている。

    「自身が書いた作品(レポート)が、すべてつながり、
    ひとつの大きな歴史的な作品となるように、日々の仕事をしよう」と。

    引退するときをイメージして、毎日、作品を書く。


    特許を読んでわからないならば、わかるように毎日、努力する。
    わかるようになったら、企業の特許を評価する。
    その評価手法を日々、深堀していく。

    企業の歴史を丹念に調べる。
    過去の製品についてネットにない資料を集める努力をする。
    アナリストは、歴史家のようにレポートを社会のために残す。

    世の中の弱者に寄り添って、哲学者のように思考する。
    事業を科学者やエンジニアのような専門性を通して評価する。
    アーティストのように世の中に共感する。


    我がチームは、そんなアナリストの集団であってほしいと
    いつも願ってきた。

    意味のないことは最小限に止めて、
    意味のあることだけを成す人生を送ってほしい。


    ■叱ったり注意したりすることは、費用対効果で割に合わない
     (組織を運営する効率)



    リーダーは、メンバーを批評してはいけない。
    比べてもいけない。

    さらに、リーダーは、
    メンバーを怒る効果はない。
    叱る効果もない。
    諭す効果もなければ、教える効果もない。
    そのことをリーダーは悟るべきだ。

    諭したり、叱ったり技術は一般に難しいし、費用対効果が低い。
    叱る方は疲れる。叱られた方もつらい。
    叱るばかりのリーダーも、精神的にきついだろう。


    叱る効果はあるのか。
    叱られることで、反発してしまう人もいる。
    反感や怒りをむしろ灯してしまう。
    丁寧に諭しているつもりでも、言われる当人は、それを好まない。
    特に、ちょっとした注意であっても、恨みを買うこともある。
    単なるジョークが言われた当人には我慢し難い侮辱となることもある。


    叱らない職場はどうか。
    叱らないことで、

    「あれ、この会社、緩すぎない?
     ここまでサボっても、大丈夫なんだ!ルルルン。
     遅刻しても大丈夫なんだ。ルルルン」。

    そう思ってくれればシメタものである。
    こちらの思うツボだ。
    ああ、楽だなあ、自分はついているなあ、
    と「自然に」思ってくれるようになる。


    そうなると、人間の内部からやる気が出てくる。
    誰からも言われないで湧き出てくるような、やる気。

    実は、そんな自発的意思が、創造的な仕事を可能にするからだ。

    ノルマでアートは生まれない。
    特に、運用は、発想の柔軟さ、自由さ、質が大切であり、
    何かを社会から感じとる作業である。

    疲れていては、感受性により起動するセンサーが作動しない。
    疲れていては、「社会を診る医者」(=運用者)にはなれない、ということだ。


    ゆるい組織では、大体の人間は悪人ではないから、
    あまりサボってばかりじゃ申し訳ないな、少しは仕事しようかな、
    と思ってくれるのだ。

    最悪、人間が腐っている場合、組織の緩さに感謝せず、
    当人は、全く、反省せず、サボるばかりかもしれない。

    そういう人は言ってもわからない。
    サボってばかりのハズレを引いてしまったら、潔く、諦める。
    だが、対策もある。

    サボらないように、ハズレ社員でもできるような雑用をやって貰えば良いのだ。
    他のメンバーが喜ぶような雑用がいくらでもあるだろう。

    雑用であっても、組織にはプラスをもたらす。
    (わたしの経験上、サボる人は、頭がいい人が多く、株価もよく当てる。
    上手にサボれない人は、頭が固く、株が当てられるようには思えない。)


    兎に角、叱らないから、リーダーの負担はゼロだ、
    そして、叱らないことで得られる効果はプラスである。

    叱らない場合の費用対効果はとても大きい。

    叱るのは、「投資効率」(組織運営効率)が悪すぎるのだ。


    会社としてやるべきことは、給料をしっかり払って、
    「社員の成長や利益貢献に応じた」昇級を実現すること。

    それ以外、会社は、何もいわずに、社員を放っておくのが一番だと思う。
    伸びる人は勝手に伸びるし、伸びない人はどんなに教えても伸びないのだから。


    また、一流の仕事は「教えられない」。
    自分なりに学んでいくしか道はない。

    各人、ツボが違うので、自学自習以外に人は育たない。
    だから、教えてどうにかなるなどとリーダーは思い上がってはいけない。
    コーチングも不要だ。

    リーダーがメンバーを教えるのは、
    メンバーが自らの意思で「教えてください」と頼んできた時だけだ。


    ■あらゆる少人数の組織運営で当てはまる原則
     ~他人を評価しない、責めない~



    ここまで書いたことは、あらゆる少人数組織の運営に当てはまる。


    我が子4人の子育てにも当てはまる。
    子育てとチーム育成は通じるものがあるのだ、と感じている。

    規則正しい生活と食事は親の義務だが、
    子どもはたくさん遊ぶことが彼らの仕事といってよい。
    それが、ゲーム三昧の毎日であっても、全く構わない。
    ゲームに限らず、何かに没頭することは必要なことだからである。

    だから、親が「子どもが勉強しない」などと気をもむのは、
    甚だ、原則違反であり、子育てが上手くいかないのは当たり前だ。

    親がガミガミいわなければ、親自身が気疲れしない。
    子どもに注意しないだけで、親の毎日が楽になる。
    子どもの将来が心配なのはわかるが、
    親が心配すれば、それが子どもに伝わる。

    むしろ、悪影響だ。


    「わたしの子どもなんだから、子の将来は絶対に大丈夫だ」
    とドンと構えておけば、子どもは安心して、すくすく育つ。

    怒る親、注意する親、費用は高くつく。
    効果もないのだ。


    子が悪いことをしたときも、

    「お前がそんなことをするはずがない」

    と子にいってやればよい。

    親が絶対的な信頼を自分においているんだと子どもが思ってくれれば、
    子育ては成功したといってよい。


    この原則は、夫婦間でも同じだ。

    妻に完璧に家事を期待する夫は、原則がわかっていない。
    他人を評価してはいけないのだから。

    家事を期待する時点で、家事をしない妻を悪く評価してしまうだろう。
    それでは、評価される妻は、たまったものではない。


    妻も夫が給料が足りないとか、失業したら困るとか、
    そういうことは夫にいうべきではない。

    お金がなければ、食べるものを節約できる。
    結果、ダイエットになる。
    健康になる。

    仕事がなければ、お金はないが、余暇が増えるから、イーブンだ。


    将来が心配なら、ウォーキングやジョギングをしたり、
    早寝早起きして、近所でボランティアでもして、世の中の深さを学べば良い。


    組織運営の原則の話であった。

    さて、余裕を与え、社員が成長すれば、会社は儲けもの。
    社員が成長しなければ、給料を上げる必要がないので、会社は損ではない。


    我がチームの話を少し。

    結果として、長期の固定されたチームで戦ってきた。
    ある同僚とは25年来、一緒に働いている。
    長~い付き合いだ。


    こういうことが自分にとって、嬉しいと思えるのだから、
    もう、わたしも年ですな。


    (了)

    P.S.今回の主張は、大組織運営や会社経営一般には当てはまりません。


    日本株ファンドマネージャ
    山本 潤


    (情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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